藤原紀香、前田敦子、熊切あさ美――「梨園」線上に浮かんだオンナたちの採点簿
が、結婚ということになると、どうなのか。「エスタブリッシュに傾倒する“我(われ)が我が”タイプは、梨園では惨敗する」のは、すでに近藤サトが実証済み。愛之助が紀香に「梨園の妻にならなくていい」と言った、という報道も目にしましたが、こういうことにおいては、役者よりも贔屓筋のほうが強い発言権を持つのが、梨園というもの。先に挙げた三田寛子がなんだかんだ言っても梨園で認められたのは、「我が我がタイプではない(『私のため』ではなく、『梨園のため』に行動できる、と感じさせることができる)女が、男の子を3人も産んだ」という部分も間違いなくあるはずです。
愛之助の元カノ・熊切あさ美は、「崖っぷち」キャラを売りにして、行く先々で「結婚したい! 子どもが欲しい!」と声を大にして言い募ることで、芸能界で延命をしてきたタレントです。が、「私が○○したいから、したいの!」というアピールを公共の電波に乗せるのは、梨園の贔屓筋にはもっとも敬遠されるやり方。それを知らなかったのなら、さすがに「対戦相手」を知らなすぎた。そんな熊切では試合前から太刀打ちできないのが丸わかりの「対:梨園」との戦。紀香は「氣愛と喜愛でノリノリ」(ブログタイトルより一部拝借。笑わせたいのかどうかは不明)で乗り越えられるでしょうか。
◎自分に酔えないフツーの女・前田敦子
そして「AKB48センター」から「ブス会中心メンバー」として華麗なる転身を遂げた前田敦子。「ブス会」とは、AKB時代に主演したドラマ『Q10』(日本テレビ系)で共演した高畑充希、池松壮亮、柄本時生と結成した仲良しグループの名前なのですが、紀香とは対照的に、「自分自身に酔い切ることができない」マエアツのありようを表現した、絶妙なネーミングです。そんな、いろんな意味で「フツー」なマエアツの熱愛報道の相手が、尾上松也でした。しかし何と言うか、前田も対戦した相手が悪かった。「悪かった」と言うと語弊がありますが、尾上松也は20歳のときに父・松助を亡くし、残された家族だけでなく父の弟子をも引き受けて、決して後ろ盾に恵まれているわけではない一家の大黒柱になることを決意した身。借金までしてしのぐ生活の中、決死の思いで自主興行をブチ上げたものの大赤字を出し、借金はさらに増加。号泣しながら遺書まで書いたそう。結構なハードコア人生を送ってきているのです。「フツー」から、とことん遠い場所にいる男。そういう男は、なかなか女には転びません。こう言っちゃなんですが、役者が違った感は否めません。
「AKBの知名度を利用した」なんて声もささやかれている松也ですが、涼しい声で「それが何か?」くらいの返答ができる程度には肝が据わっているのがわかります。そんな歌舞伎役者が最初の相手だったのはマエアツにとっての不幸だったのかもしれません。
話は少し変わりますが、ハリセンボンの近藤春菜は、松也と『有吉弘行のダレトク!』(関西テレビ)で共演した際、番組開始30秒の段階で「いい男だと思いますけど……ないですよね」と言い放っていました。この勘の鋭さ、意思表示の速さと正確さ(これが相手より上に立つための必須テクです)、しかし松也を完全にへこませるでもなく、場の空気を読みつつ、その勘を「和み笑い」くらいの方向に収めていく能力……。あの松也が、春菜との会話では徹頭徹尾、笑顔のまま転がされまくりでした。さすがとしか言いようがありません。
もし、春菜がこの能力をキープしたまま、もうちょっとルックスに恵まれていたとしたら、芸能界で1、2を争う「恋多き女」になっていたでしょう。あっちゃん、次の「ブス会」ではぜひ春菜を名誉総裁あたりのポジションで迎え入れ、その爪の垢を煎じて飲むくらいのことはしましょうね……。
高山真(たかやま・まこと)
女性向けメディアを中心に執筆するエッセイスト。web「ラブピースクラブ」でコラム「メディアグルメ」を連載中。1月下旬に新刊『恋愛がらみ。』(小学館)を発売。