もう結婚に「恋愛は不要」? 牛窪恵が語る、恋愛・セックス観の世代間ギャップのゆくえ
◎恋愛と結婚と出産は地続きでなくていい
後半では、本書の編集を担当した干場氏とのクロストークが繰り広げられた。ある調査で20代前半女性の4割が「ラブホテル代が割り勘」と答えたことに、バブル時代を生きた牛窪氏は「どうしてそこまで自分を下げるの?」と非常に驚いたそうだが、ウーマンリブの時代を生きた干場氏は「自分を楽しむという意味で、対等であればいい」と反論。2人のこの考え方の違いこそが、景気や時代の空気が恋愛やセックスの価値観に大きく左右するという本書のテーマ性を物語っていて非常に印象的だった。
女性の社会進出が女性の未婚化を加速させると言われていることについて牛窪氏に問われると、干場氏はフランスの女性の生き方を引き合いに出し、「子どもを産むには結婚が必要条件ではない、という認識が日本にもあれば少子化は解決する」と語った。フランスでは出生率が2を上回っているが、その56%が非嫡出子であるという。女性が1人でお金を稼ぎ子どもを育てることに対し、周りから偏見をもたれない環境であれば、その女性はさらに自由な恋愛ができると語った。
また、中学や高校まで親とお風呂に入るという「親ラブ」の進行が「親が気に入る相手でないと結婚したくない」「親のために結婚式を挙げる」といった価値観を根付かせていることも解説された。牛窪氏はこうした親とのつながりを求めすぎる子どもたちが増えたのは、自分たち親世代の責任でもあると自戒の念も込めて語った。親とのしがらみが結婚の障害になることについては、最近よく語られている。牛窪氏がこれを問題と捉えて発信していくことは、多くの親世代に響くのではないかと感じさせた。
牛窪氏は、イベントの最後に「恋愛と結婚を一度切り離して考えていくことが、若者にとって、これからの希望になるのではないか」と総括した。干場氏も語ったように、恋愛と結婚(そして出産)が地続きだと考えなくてもよいという。今の幸せを考えることで精いっぱいなのは仕方がないが、結婚したいと思い続けていても、億劫な恋愛を避け続けた結果、気がついたら恐れていたはずの孤独死が身近に迫っていたと後悔するかもしれない。恋愛は面倒くさく、失敗したら傷つくけれども、その先の楽しいことや幸せの感じ方は昔も今もそんなに違いはないはずだ。本書のあとがきでは、自分たちは若者に「見守り型の支援」をするべきで、「若者たちは自分たちの力で新しい恋愛や結婚のかたちを見つけてくれるだろう」とエールを送っている。世代間ギャップを面白がるのではなく、若者が抱える悩みや問題に活路を見いだそうとする牛窪氏の「絶妙な老婆心」が垣間見えたトークイベントであった。
(石狩ジュンコ)