カルチャー
中華マネーは子育てにも影響

年間保育料は380万円! 中国の「貴族幼稚園」が話題、一人っ子にかける“教育”事情

2015/11/27 14:15
園内には本当に森林がある

 10月下旬、中国・広東省広州市郊外に開園したばかりの“貴族幼稚園”が話題になっている。ネットメディア「視覚中国」(11月11日付)によると、「無辺界森林幼稚園」の敷地面積は約7万平方メートル。1年間の保育料は19.8万元(約380万円)で、月謝にすると30万円以上だ。開園してまだ2カ月たらずだが、すでに70人が入園しているという。

 園内は人文芸術センター、森林教室、科学技術手工創意工場の3カ所に分かれ、人文芸術センターには中国伝統の京劇や武術の教室があり、演技を発表できる小劇場まであるという。また森林教室では、園児たちは木の切り株に登ったり、ヤギに餌を与えたり、鳥の声を聞いたり、テントを張ったり、植物の名前を覚えたりと、自然の中でさまざまなことを学んでいく。

 園児4人あたりに1人がつくという先生たちも、普通ではない。その9割が男性教師で、大学卒であるのはもちろん、留学帰りの修士号取得者や音楽、美術、児童心理学の専門家などで占められているという。また、外国人教師による授業もあり、外国語の環境の中で過ごす時間も作られている。

 貴族幼稚園と呼ばれる超お金持ちのご子息・ご令嬢向けの幼稚園はこのほかにも広州市内に数校あり、中には園内でゴルフレッスンが受けられるところまである。

小動物園もあり、餌やりも体験できる

 こんな恵まれた教育環境に、ネット民たちからは「金持ちの子どもというだけで、人生のスタート時点からオレたちとは違うんだな」「オレだって、親が金持ちだったらこんなところに行きたかったよ」という、ため息のようなコメントも聞かれたが、それ以外にもヤッカミのような斜め目線からのコメントも多く見受けられた。

「森の中で自由に遊び回るんだったら、オレに田舎でいくらでもできるよ」
「子どもにゴルフやらせて何になる? 一番の運動は走り回ることだろ?」
「19.8万元もあったら、オレなら女子大生を囲って自分の子どもに教えさせるよ。もちろん夜はオレのお供に」
「いくら幼稚園でゆったり学んでも、小学校に上がれば詰め込みの中国式。意味ない!」
「最後は大学入試を受けなくちゃいけないんだから、結局、どこに行っても同じ」

 現在の中国における子どもの教育について、現地の事情に詳しい中国在住のフリーライター・吉井透氏は言う。

外国人教師によるゴルフのレッスンがある幼稚園も

「一人っ子ばかりの中国の家庭では、子どもの教育にかけるお金はハンパではない。子どもが大人になって出世してくれれば、自分の老後が安泰ですから。いわば先行投資みたいなものです。この貴族幼稚園ほどではないにしても、スポーツや音楽、芸術、英語など、子どもを習い事に通わせる教育熱心な親御さんはたくさんいます」

 子どもを外で元気に遊ばせたいと考えても、中国の都市部には子どもが自由に遊べる場がほとんどなく、大気汚染も深刻だ。結局、室内で習い事をさせるか、高い授業料を払って郊外の貴族幼稚園に通わせるしかないのかもしれない。
(佐久間賢三)

最終更新:2015/12/03 21:47
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