サイゾーウーマンカルチャースポット50代の女が得る「自由」とは? カルチャー 伊藤比呂美トークイベント ライブ版『女の一生』 「人と関わらなくてもいい」「どんな夫も“金太郎飴”」伊藤比呂美『女の一生』の教え 2015/11/28 16:00 スポット ■人間関係や親から逃げてもいい そして親子関係の悩みも男性から寄せられた。「親父から逃げられないものなのか」と 父親の存在を断ち切れず悩む20代男性には、「20代は親から逃げようとするもの。50代になると体形もハゲ方も親と同じ、病気も同じになるんです。DNAってそんなもの」。伊藤さんも母親に似てきてゾッとすることがあると打ち明ける。「母の鏡台に映った自分の顔、孫を抱く手、ことごとく亡くなった母そっくり。DNAからは逃れられないと思う」という言葉に、会場の女たちが「まったくそうだ」と大きくうなずく。 人間関係や生きづらさに苦しむ女たちにも言葉を与える。「自分を大事だと思えるようになるには?」という50代に、「今日食べたいと思ったものを、その日のうちに必ず食べる。するとだんだん自分の欲望が把握できるようになり、それを実行する力がつく。『今日はがんばった』と言い聞かすことで、肯定できるようになる」。伊藤さんは神経質だったが、子どもが生まれて「がさつ、ずぼら、ぐーたら」と呪文のように唱えていたら、本当にそうなったと笑う。「自分は大切なんだ。毎日よくやっている」と言い聞かせると、本当にそう思えるようになるという。そのためには、自分の欲望を把握しよう。 「犬仲間の女性が自分のことを嫌っている」という悩みには「方法はひとつ。逃げる」と即答。「合わない人とうまくやろうという努力をするより、逃げた方が早い。30代から40代は、人と関わりたくなければ関わらなくていい。犬友もママ友も必要ない」。勇気づけられる言葉だ。今日から逃げたっていいのだ。 小さな会場の、すぐ手の届きそうなところから語りかける伊藤さんの姿は、伊藤さん自身が言うように、まるで“女子校の委員長”だ。委員長の言葉を聞き、経験したことのないことには「そうなんだ~」と安心したり「あと少ししたら……」と希望を抱く。もう経験済みのことであれば「そうそう。私もそうだった」と共感する。軽妙なトークに大笑いしながら、いつの間にかもやがすっきりと晴れていくようだ。脳内がセロトニンで満たされる感じ、これぞ比呂美ワールド。 伊藤さんは『女の一生』まで、女性の読者しか想定していなかったという。“女子校”と表現したのもそういうわけだが、この日、会場には2割ほどの男性の姿があった。伊藤さんは「大好きな経血の話ができない」と苦笑しながらも、「『女の一生』後、つきものが落ちたよう。世の中には男と女しかいないのだから、仲良くやっていかないといけないと思っている」と、今の心境をさっぱりと語った。 最後に、11月17日に出版された『石垣りん詩集』(伊藤比呂美編、岩波文庫)の一編を朗読して、イベントは終了した。上野千鶴子氏は、伊藤さんの『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』(講談社)を「かたり」と評した。朗読はもちろん、ライブ版『女の一生』も、まさに「かたり」である。伊藤さんと同時代に生まれ、生の「かたり」に触れることができるのは幸せだ。 帰り道、体の芯までポカポカして、心身が弛緩している感じがする。何だ? この心地よい疲労感は……と考えていたら、思い当たった。温泉に浸かった後と同じなのだ。効能あらたか、比呂美温泉。またどっぷり浸かりたい。 (坂口鈴香) 前のページ12 最終更新:2015/12/01 00:14 Amazon 『女の一生 (岩波新書)』 委員長の言葉を胸に、立ち上がれ漢たち! 関連記事 女は閉経で刷新される? 伊藤比呂美が語る女の性と『閉経記』伊藤比呂美×枝元なほみの「女は発酵モノが好き」で考えた、“女人生”の発酵の仕方結婚出産だけが女の人生ではなかった――『江戸の女子図鑑』で知る、現代女性の“選択肢”「元気で若かった頃の自分にサヨーナラ」45歳の誕生日、老いより“死”が近づいてきた姑の手作りマーマレードジャム&納豆を投入、残り物一掃「ジャイアンシチュー」 次の記事 マッサージ店もある錦糸町のリトルバンコク >