「婦人公論」夫婦特集に見え隠れする、バブル世代のほのぼの老後願望
■遅くきた「運命」ほどリスクもいっぱい
今号では山田のほか、脚本家・木皿泉「50代で相棒が脳出血に倒れ、結婚する覚悟が固まった」、キャスター南美希子「2年前に別れた夫の突然の訃報。失くした家族の光景に慟哭して」、元レスラー・佐々木健介「妻・北斗晶よ、親子4人のタッグで乳がんに打ち勝とう」など、病気や別れを契機に夫婦の素晴らしさを見つめ直すインタビューがいっぱい。
いいないいな夫婦っていいな~という気持ちに、文字通り水を差すのが「ホンネ集 努力に水を差す亭主にウンザリ」。妻が出張のたびに「俺は理解のある夫だからな。お前が出張に行くのを許可してやるよ」と威張る夫。夢だった喫茶店を開業するために相談もなく会社を辞めた夫。断捨離にハマり妻の大事なキッチン用具を全て処分してしまった夫。山田先生のお言葉「どんな人間関係も、小さな努力を積み重ねてメンテナンスしないと、いい関係を維持することはできません。ましてや夫婦は、ひとつ屋根の下に他人が暮らしているのです。努力なしにいい関係でいようというのは、考えが甘いと思います」を、そっくりそのまま夫に突き付けてください。
男女は付き合って結婚するのが当たり前だと思うのが20代。だとしたら結婚を「運命」と結び付けがちなのが50代。そう思わずにいられなかったのが、読者体験手記「人生後半に見つけたのは、運命の人!?」です。「新郎は初婚、新婦は5回目。幼なじみだった私たちが38年の年月を経てようやくたどり着いた関係は」は、人生の荒波にもまれまくった女性がずっと思いを寄せてくれていた幼なじみと50手前で結婚するという少女マンガもびっくりのストーリー。そしてもう一つは「25歳下の『熟女好き』から熱烈な求愛を受け、思わず頷いた先に修羅場が待っていた」。年下男子に言い寄られその気になったものの、いざ両親兄弟とのご対面で「オバサン、年考えなよ! 子ども産めないし無理でしょ」と総攻撃を食らう、レディコミまっしぐらの物語です。しかしどちらも共通して素晴らしいのは、そのバイタリティとへこたれなさ。「人生も捨てたもんじゃない。5度目の正直ということもあるのだから」「若い男にはもうコリゴリだが、これからも恋人は探していきたいと思っている。孤独は嫌だもの」。50代はストロングスタイルが正解のよう。
結婚なんて自分には関係ないと思っていたからこそ、突然転がり込んできた結婚を「運命」と感じてしまう。運命とはこの世で最も身も蓋もない言い訳です。50代でその「運命」の結婚をするならば、山田先生のような、そしてこの2人の主人公のような、殺しても死なない鋼のメンタルが必要なのです。しかしそれができるのは一握りの人。大事なことを見ず知らずのスピリチュアリストに委ねる中年女性の気持ちがなんとなくわかるような……。
(西澤千央)