カルチャー
浦上蒼穹堂代表・浦上満氏インタビュー

「春画展」発起人に聞く“わいせつか芸術か”議論――「これは芸術だ」と言う気は一切ない

2015/11/21 19:00

■英国人の目には「滑稽」と映る、日本の春画議論

――メディアでは、春画問題が取り上げられる際「わいせつ」か「芸術」かの二元論で語られていますが、その点についてはどう思いますか?

浦上 春画にもエログロナンセンスなものもありますし、芸術かどうかというのは見る人が感じればいいんです。ただ、今回の春画展では「良いもの」を選んでいます。「良いもの」とは、見終わったときに余韻や感動がある。見る側も試されていると思いますよ。例えば春画を見て、「性器が大きく描かれていて面白いな」と感じるだけでもいいのですが、あれだけ性器を大きく描いていても、絵として不自然に見えないのは、画家の腕なんですよね。春画を描かせると画家の腕がわかると、当時は言われていました。春画とは、ありえない状況を不自然ではなく見せる……そう考えると、春画は性愛を描いているとともに、ファンタジーを描いているともいえる。だからタコも出てくるし、カッパも出てくる。それに対して「けしからん」なんて言うのは、粋じゃないという感じがします。

 一番始末が悪いのは、見てもいないのに「こんな卑猥な絵」などと批判する人。日本はこれほど性風俗があふれている国なのに、どうして春画になると過剰反応するの? とイギリスのメディアが書いていました。滑稽ですよね。

――日本の文化である春画を、日本人がなかったことにして否定するのは、やはりおかしく見えるのかもしれません。

浦上 明治政府が春画をめぐって、諸外国に対して「恥ずかしい」という思いがあり、春画を弾圧しました。けれど21世紀になってもまだ恥ずかしいと言うのか、と。ましてや当時「春画は恥ずかしい」と言っていた欧米の人たちが、今では春画を最高のアートだと言っている。大英博物館の春画の展覧会を訪れた人の中には「日本人観が変わった」「日本人はこんなにおおらかで、ウイットやユーモアに富んだ人たちだったのね」と語った人もたくさんいたそうです。

 春画を展示することは、日本人の恥を見せていると思う人もいる。けれど一方では、カッコいい、素敵だ、と褒める人もいる。感じ方はそれぞれだし、否定はしないけれど、見ないのにノーと言うかたくなさは捨てた方がいいと思います。そういえば、20以上の美術館に春画展の展示を断られましたが、「子どもと一緒に見られないから」という理由が多かった。「じゃあ、あなたはいつも子どもと一緒に美術館に行くんですか?」と逆に聞きたかったですよ。

――見る人がどう受け止めるかは自由ですよね。

浦上 「これは芸術だ!」と言う気は一切ありません。見たい人は見る、見たくない人は見ない。これでいいと思います。そして見た人が気に入らなければ、それはそれで構わない。ただ、スポンサーもつかないし、いろいろな逆風があり、「春画展」開催直前まで不安だらけでしたが、ふたを開けてみると、こうして大変好評を得られています。発起人としては、「やった!」という思いでいっぱいですね。

春画展公式サイト

最終更新:2015/11/21 19:00
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