『おこげのはなし』作者が語る、「女同士の珍妙な友情」「居場所がない女」の愛おしさ
夜な夜なゲイバーで繰り広げられる小話を面白おかしく、若干の毒を利かせながら描き話題を呼んだ『きょうのゲイバー』(KADOKAWA)。Twitterでじわじわとファンを増やしている作者・TSUKURU氏が次回作に選んだテーマは“おこげ”。ゲイバーを根城とする3人の女たち(マリコ、エミ、メイコ)とママの不思議な友情関係は人生にお疲れ気味のアラサー、アラフォー女性の心を解きほぐしていく。女たちはなぜゲイバーに魅せられるのか。自身もゲイであるTSUKURU氏がおこげたちの素顔を語る。
――TSUKURUさんが『きょうのゲイバー』や『おこげのはなし』(KADOKAWA)のような“ゲイバーマンガ”を描き始めたきっかけは何だったのですか?
TSUKURU ストレス発散がてらに、ユルめのものをちょこちょこ描いていました。ネットに上げたら、誰かの目に留まるかも……という野心があったことは否めませんが(笑)。
――ゲイバーとの付き合いは、どれくらいですか?
TSUKURU 昔から通っていますね。常連店もいくつかあるし、昨日もちょっと6時くらいまで飲んでしまったんですけど……。
――朝のですか!?
TSUKURU そう。もはや昨日ではなく今日ですね……ちょっとお水いただきます(ゴクリ)。
――TSUKURUさんがどんな視点でこれらの本を描かれていたのかが、とても気になりました。お客さん側なのか、それともお店のママ側なのか。
TSUKURU どちらもですね。
――では『おこげのはなし』に出てくる3人の女性にも、モデルがいるのですか?
TSUKURU 実在する女性です。その中の2人と、今朝まで飲んでました(笑)。彼女たちと一緒に飲んでいるうちに、この女同士の珍妙な友情関係を描くのも面白いかなと思って『おこげのはなし』が生まれました。あの3人はまるでひな壇芸人のように、ゲイバーでの正しい立ち振る舞いをしている。いわばプロのおこげです。
――プロのおこげ!
TSUKURU もう焦げ付いてますね(笑)。身を粉にして笑いを取って、帰り際に「今日も、やりすぎちゃった……」って、いつも反省してる。そんな3人が本当に愛らしいなと思って。
――ゲイバーに集う女の共通点ってありますか?
TSUKURU 今日インタビューしていただくということで、3人にあらためて聞いてみたんですよ。「どうしておこげになったのか?」って。みんな、今40手前くらいの年齢なんですけど、30手前で女はいろいろと決断しなきゃいけないと彼女たちは言っていて。友達関係も変わるし、仕事の環境も変わる。それで「自分の居場所」を探した結果、たどり着いたのがここ(ゲイバー)だったと。居心地がよくて、まぁ逃げてるだけかもしれないですけど。
――女にはなかなか1人で飲みに行ける場所がないので、この3人を羨ましいと思う同世代の女性は多いのではないでしょうか。
TSUKURU イラストにするとなんか可愛らしくなってますけど、現実の3人を見たら悲愴感が背中に漂っているし、あれを羨ましいとしていいのかなという疑問もあります(笑)。現実の話をすると途端にうなだれてますし、首据わってない感じに。
――TSUKURUさんから見て、ゲイバーに向かない女はどんなタイプですか
TSUKURU 男とかお金とかそういう汚いものが好きな女に限って、すごくブリッコなんですよ。汚いものが好きなのに、見た目はキレイに見せている。そういう人は、来ても長続きしない気がします。
――「汚いもの、男とカネ」って名言……。
TSUKURU 「ゲイの友達がほしいんです~」とか言ってくる女も、大抵いけ好かないのが多い。「褒めてけなして慰めて~」ってどんだけ都合いいんだよって。本気でけなしたら、すぐ泣くんですよ。ほんっとキライですね!