「ちゃんとしてなきゃ」と飲酒に罪を覚えるママを覆う、“世間体フィルター”の外し方
女の荒ぶる激情や秘された感情を描き続ける2人の漫画家――40代・子持ちの安彦麻理絵と30代で同じく子持ちの田房永子。女たちの喜怒哀楽と、そこからはみ出る感情をもつづる、2人の交換日記連載!
<10月16日 安彦麻理絵>
エイコちゃん、こんにちは。なんだかすっかり、日差しが秋らしくなってきましたねぇ。秋、といえばやはり「食欲の秋」なんですが、エイコちゃんは日々、何食ってますか? 実は私、最近、スパイスとかハーブにハマりまくってまして。
昼間は「ごはんと味噌汁」っつー、まるで寺の坊主のような日本人メシを食ってるのですが、これが夜になると……とにかく「スパイスとかハーブが効きまくった、一体何人だかわからんメシが食いたい!!」になっちゃうんです。世の中にはさまざまな「現実逃避」があるとは思うんですが、私にとっての現実逃避はこの「何人だかわからんメシを作り、それを食べる」っていうのが、最高のソレみたいなんです。
とはいえ、うちには子どもが3人いますからねぇ。「クミンシードがっつり入れたニンジンのサラダ」とか作ったってイヤだられるわけですよ。だから、私が無国籍人になれるのは、週末とかの休日限定。
最近ドハマりしてるのが「ポヨコンヒトマテ」ってゆーメキシコ料理です。実はこの料理、夏に、箱根の強羅に行った時に、駅前のレストランのメニューにあったの(箱根でメキシカンっつーのもどうかと思うけど)。で、すかさずソレ注文したんだけど「今日はまだ出せない」って断られちゃって、もう気になって気になって仕方がないから、帰宅後、ネットで色々調べて、それで妄想ふくらまして作り上げたのが「オレ流ポヨコンヒトマテ」。
豆と鶏とトマトの煮込み……なんですが、チリパウダーやクミンシードを「これでもか!!」ってくらいに効かせて、唐辛子、タイムやローリエ、トマト缶と一緒に煮込み上げるという、酒飲みにはたまらない一品。これ作るともう、「ここ、今、どこよ!?」って言いたくなるような、エキゾチックなニオイが部屋中に充満して、幸せな気持ちになれるんですわ。あまりに気に入っちゃって、「三日連続、夜、ポヨコン」って日がありましたね。
あとは、ギリシャ・トルコ料理の「ムサカ」。これは、夫から「子どもの頃に初めて食べた時、あまりのうまさに衝撃を受けたから、アンタ作って」というリクエストが出まして。またしてもいろいろ調べ上げて、シナモンやナツメグ、クローブとかいろいろ投入して作った……のはいいけど、初ムサカは茄子の焼きがイマイチで「これではない」という、夫からの冷酷なジャッジが。あまりに悔しくて、懲りずに翌日もまた別レシピでムサカ作成。「まだ違う」という夫が「じゃあこうなったらオレが作る」ってなって、またしても連日ムサカ。ポヨコン・ポヨコン・ポヨコン・ムサカ・ムサカ・ムサカ、って、こんな食事してたら太るのあたりまえっすよ(私はこういうの食べながら、ワインとパンってのが大好きなんで)。
今の私、まさに「無国籍デブ」と化してます。