バイオレンス映画の名手タランティーノ監督が反暴力デモに参加するも、警察側は「お前が言うな!」
銃社会アメリカでは、万引き犯のような軽犯罪者であっても銃を所持し、相手が警察官であっても躊躇なく撃つことが少なくない。そのため、警察官は、容疑者が不審な行動を取り、身の危険を感じたら銃を撃つ。意味もなく銃殺するのは警察であれども違法だが、「警察官は暴力ばかり」と責め立てられれば、警察側としては「市民と治安を守るという使命を持ち、命を懸けて働いているのに、それはないのでは」と憤りを感じるだろう。とはいえ、白人警察官と黒人コミュニティとの信頼関係は薄く、今後もこの手の事件は続くとみられている。ニューヨークでは「白人警察官が黒人を理不尽に殺した」報復に、無関係な警察官2人が射殺される事件が発生。暴動だって起きているのだ。そんな中で開催されたデモに、バイオレンス・アクションばかり製作しているタランティーノが参加したため、警察側が大激怒してしまったのだ。
デモ翌日の25日、ニューヨーク市警察労働組合は、「暴力、犯罪を賛美する映画で稼いでいる人間が警察官嫌いだとしても十分、納得できる。クエンティン・タランティーノが殺人鬼と呼んだ警察官たちは、下劣な大作映画に住む空想上の人物じゃない。本物の犯罪・暴力から地域住民を守るため、身の危険を顧みず、時には命さえも捧げる、そういう人間なんだ」と強い憤りを表明。
今回のデモは、黒人の強盗殺人容疑者を追っていた警察官が、容疑者に射殺された直後に行われたこともあり、ただでさえ組合は「警察官が意味もなく黒人を殺している」という意見に反発していた。そんな中、撃つことを躊躇したら警察官が殺されることもあるのに、タランティーノが「警察官は殺人鬼!」と火に油を注ぐような発言をしたのだ。
前出の労組は、「ニューヨーカーは、退廃的な作品ばかり製作するこの男に意思表示すべきだ」と怒りをあらわにし、「クエンティン・タランティーノの映画をボイコットしよう!」と呼びかけた。
27日になるとロサンゼルス警察保護連盟も、「クエンティンはバイオレンス・アクション映画監督である己の影響力も考えずにデモに参加したのは事態を悪化させる行為だ」と強く非難、ボイコットに賛同するとの声明を発表した。米メディアは、今後、全米の警察関係機関にボイコットが広がるのではないかとみている。
今回の件について、ネット上では、タランティーノに批判的な意見が多い。「なんでタランティーノが、このデモに参加してるの?」「映画の宣伝、黒人のこと考えてますってポーズでしょ」「マイケル・ムーア気取りかよ。今後は、その路線になるのか」「黒人たちが警察官に射殺されていることを、こいつが本気で気にしてるとは思えないね。アホな映画で、ニガー、ニガーって言わせてるしね」という声が上がっている。
タランティーノ映画常連のサミュエル・L・ジャクソンとカート・ラッセル主演の新作映画『The Hateful Eight』は、アメリカで2016年1月8日に一般公開される予定。今回の件で同作の知名度は一気にアップしたわけだが、興行成績的には吉と出るのだろうか?