バイオレンス映画の名手タランティーノ監督が反暴力デモに参加するも、警察側は「お前が言うな!」
エグい暴行・殺人シーンに、薬物過剰摂取シーンなどがてんこ盛りの『パルプ・フィクション』(1994)、スプラッタ満載の『キル・ビル』(03年、04年)シリーズ、これでもかというほどの銃撃シーンを盛り込んだ『ジャンゴ 繋がれざる者』(12年)などを手がけ、バイオレンス・アクション映画の第一人者と呼ばれているクエンティン・タランティーノ。
『ジャンゴ~』は、実際には存在したのに、これまであまり語られなかった解放奴隷の黒人カウボーイが主人公の西部バイオレンス劇で、タランティーノは、「アメリカにとってひどい過去である奴隷問題を扱った映画を製作したかった」と説明。しかし、黒人を侮辱するニガーという単語が連呼されている上、あまりにも暴力的な内容であることから、映画監督のスパイク・リーが「我々の先祖はマカロニ・ウエスタンではなく、奴隷だ。先祖に対して失礼だと思うから、この映画は見ない」と嫌悪感を示すなど、黒人の間では不評の声が多かった。
しかしタランティーノはめげることなく、再び黒人男性が主人公の新作『The Hateful Eight』を製作。先日受けた取材で、「『ジャンゴ~』では黒人批評家から酷評されましたが」という質問に、「別に。なんとも思わないね。わたしの映画が嫌いなら、嫌いだってことさ。映画の意味が理解できなくても、別にいいし」とムスッと回答。自分は人種差別主義者なんかじゃないと、あらためてアピールした。
そんなタランティーノが、10月24日にニューヨークで行われた、警察官による暴力に反対するデモ「Rise Up October」に参加。多くの黒人たちと共にデモ行進し、壇上で「わたしがなぜ、ここにいるのか? なぜなら、わたしは道徳心のある人間だからだ。だから、殺人が起きているのを見て、傍観しているわけにはいかないんだ。殺人は殺人。殺人鬼は殺人鬼なんだ!」と声を荒らげながら主張。「わたしに与えられた残りのスピーチの時間は、遺族に使ってもらいます」と言い、声援を浴びながら壇上から降りる様子が大々的に報じられた。
デモで掲げられた被害者の写真は黒人ばかりだったのだが、アメリカでは昨年から白人警察官が黒人を射殺するという事件が相次いで報じられており、今回のデモも「これ以上、無防備で無抵抗な黒人を白人警察官が殺すことを許すな!」という訴えが軸にあったとされる。