カルチャー
「『おしゃべりセプテンバー』feat.『さよならセプテンバー』」レポート

「手をつなぐまで5冊かかる」北欧女子が語る、日本の少女漫画が「海外ではありえない」ワケ

2015/10/10 16:00
クリーク・アンド・リバー社

 さらに南部氏は本作の裏話として、「スウェーデン版で描かれていた、同性愛者である男性のベッドの上にコンドームが大量に置いてあるシーンは泣く泣くカットした」と暴露。これにはオーサ氏も、「スウェーデンではコンドーム描写はセーフティなことなのでむしろOKなのに、日本ではNGになる」と笑いながらも、「『さよなら~』はもともとスウェーデン向けに描いた作品なので、皆さんがこれを読むと、私が日本の恋愛漫画を読んで感じる“不思議”と同じような感覚が味わえるかも」と、読みどころをまとめた。

 そしてイベント終了後、オーサ氏の“日本の少女漫画観”について詳しくお話を伺った。オーサ氏によると、「女性が読む、女性が主人公の少女漫画を、女性漫画家が描いていること自体が、海外ではありえない」ことのようで、「(日本の少女漫画は)女性にとってどういう男性が魅力的なのかが、ちゃんとわかっているのがすごい」と言う。

 例えば主人公が好きになる男性も、「日本の少女漫画に出てくるのは細くて性格も優しいタイプが多いが、欧米の漫画に出てくるのはマッチョばかり」という。しかし、実際には海外の女性も細身で優しい男性のことを好きになるそうで、こうした“女性が惹かれる男性”がちゃんと描かれていることも、日本の少女漫画の魅力のようだ。

 これは、「欧米の漫画の男性イメージは、ハリウッド映画の影響が強いから」だそうで、ストーリーに関しても「ハッピーエンドを迎える場合が多いかもしれません」という。また日本の少女漫画はキャラクター描写が豊かで、オーサ氏も「『セーラームーン』のタキシード仮面や、『NANA』の蓮といった男性キャラを好きになった」といい、欧米でコスプレ文化が流行する理由の1つには、このような背景があるようだ。ストーリーに関しても、「ハッピーエンドとは限らない」ところに魅力を感じているという。

 『さよならセプテンバー』で描かれているのは、『テラスハウス』(フジテレビ系)のようなシェアハウスで繰り広げられる男女のピュアな恋愛模様でも、理想を具現化してくれるような恋愛ファンタジーでもない。北欧の若者たちのリアルな生き方や価値観が表出されたストーリー展開の中に、コメディやスキャンダラスな要素、そしてオーサ氏独特のダークでシニカルな視点がちりばめられている。

 しかし絵柄や雰囲気、キャラ設定などはしっかり日本の少女漫画仕様であるため、そのギャップが心地のよい違和感として新鮮味を帯びている。「日本の少女漫画を通ってきた北欧の女性漫画家が描いた恋愛青春漫画」としては先駆けであるだろう本作。今後のオーサ氏の作品にも注目したい。
(石狩ジュンコ)

最終更新:2015/10/13 17:49
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