格差大国アメリカに渦巻く不満を逆手にとった、勝ち組&負け組のバディドラマ『SUITS/スーツ』
また脇役が素晴らしいのもこの作品の大きな魅力のひとつ。エリート弁護士事務所を率いる女所長ジェシカを演じるジーナ・トーレスや、ハーヴィーが信頼を寄せる秘書ドナを演じるサラ・ラファティはもちろんのこと、ハーヴィーを敵視するルイス役を演じたリック・ホフマンが、痛快だと大絶賛されているのだ。ルイスは、ねちっこくてイヤミで他人には厳しく自分には甘い最悪のキャラだが、弁護士としては優秀で、実は繊細な性格。猫が大好きで猫からも好かれるというオイシイ設定で、回を追うごとにファンが増えていった。ハーヴィー以上にウィットあふれるルイスの台詞を楽しみにしている視聴者も多く、今では「ルイスのために『SUITS/スーツ』をみる」というファンもいるほど。
また、「勝ち組」ファッションが楽しめるという点でも、この作品は大きな話題を集めている。ハーヴィーは高級ブランド「トム・フォード」のオーダーメイド・スリーピースを愛用しており、ルイスももちろん高級ブランドを身につけている。クライアント受けのよい彼らのファッションを、実際に参考にしているビジネスマンも多いという。そして、それ以上にすごいのが女性メインキャラクターのファッション。ボディラインがわかるタイトでセクシーな服装が多いのだが、それは「勝ち組」世界に生きる肉食女子だからこそ。仕事はもちろんのこと、体形が崩れないよう努力を怠らず、スタイルに自信がある彼女たちだからこそ着られるファッションなのだ。
ビジネスマンが参考にしているのはファッションだけでなく、ハーヴィーの「勝ち組」ならではのルールも同様。「リスクを恐れない」「失うものを最小にしようとばかり気にする者はビッグになれない」「規則に従ってばかりでは成功できない」「外見は才能と同じくらい大切」「最悪の状況に陥っても冷静でいること」「敵をよく知ること」「新人だからといって新人らしく振る舞う必要などない」などなど。ネット上で、「ハーヴィーのルールは手本になる」と話題を集めているのだ。
アメリカでは8月にシーズン5が終わったばかりだが、すでにシーズン6の製作/放送が決定。これからも多くのファンを魅了し続けるものと見られている。
堀川 樹里(ほりかわ・じゅり)
6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴20年以上、豪州→中東→東南アジア→米国→台湾を経て、現在は日本に帰国。数年後に来るだろう海外生活を前に、日本での生活を満喫中。