白斑問題から学ぶこと――コンプレックスを刺激する広告と距離を置き、冷静な想像力を持とう
夏が終わったこともあり、改めて今夏の美容雑誌を眺めている。例年、初夏からは美白化粧品のPRが過熱する時期だが、2013年にカネボウによる白斑の問題が表面化して以降、美容雑誌での美白の扱いが変わってきている。一時期は、「美白」を前面に押し出したキャッチフレーズが並んでいたが、現在は「透明感」という言葉で、肌本来の美しさを訴求するようなナチュラルな美白へと移行している。
◎真面目な愛用者が被害に遭うという悲劇
「ロドデノール」という成分を含んだ美白化粧品を使用したことにより、肌がまだらに白くなる「白斑」症状を訴える人が相次いだカネボウの白斑問題。消費者から白斑の症状を報告されていたにもかかわらず、同社は商品の自主回収などの対応が後手に回り、それが結果的に被害者を増やすことになった。
白斑問題を検証したNHKの『時論公論 “美白”化粧品 なぜ被害が起きたのか』によると、白斑問題は、「ロドデノール」を含んだ複数の化粧品を購入し、重ね付けして使用していた人に特に症状が出る可能性が高いという。NHKの取材によると、カネボウは実際の使われ方として多い、化粧水と乳液での使用テストは行っていたが、化粧水・乳液に加え、ナイトクリームやマスクといった3種類以上を併せて使う場合の試験は行っていなかったことがわかったという。肌が白くなることを信じ、カネボウが提示する使用ステップを真面目に守り、ブランドへの愛着も大きかった方が被害を受けられたのは、あまりに切ない。
今回の問題となった「ロドデノール」は、シミやソバカスのもととなるメラニン色素の生成を防ぐ、カネボウ独自の新規成分である。医薬部外品として厚生労働省で申請が通っているにもかかわらず、このような問題に発展してしまったことは、先に述べたように使用想定の甘さが1つの原因といえる。特に美白化粧品に関しては、安全な効果を求めて医薬部外品を選ぶ消費者が多い中、一般的な化粧品よりも申請が厳しいはずの医薬部外品の商品でさえ安心して使えないという状況を作り出したことを踏まえると、今回の事件が消費者に与えた影響は大きい。医薬部外品は、医薬品と化粧品の中間に位置し、安全性と効果の両方が担保されているといった、いいとこどりのイメージがある。しかし効果がある分、個人の使い方や頻度・体質・環境などにより副作用のリスクもあることを、企業側が消費者にもっと伝えなければならないと感じた。