東村アキコ『ヒモザイル』が炎上! 主婦&バリキャリ女子を攻撃する“勝者”目線の偏り
3:アシスタントに対するパワハラ
先日放送された『漫勉』(Eテレ)を拝見するにつけても(とても興味深い番組でした)、東村先生のもとに何人かの男性アシスタントがいることは事実です。おそらく本作も彼らがアシスタント業務を請け負っていることでしょう。もしかしたら“セレブ”ママ友のエピソードの背景なども、彼らが描いていたかもしれません。
本作にはパワハラと思われても仕方のない描写がいくつか登場します。外部に対する謙遜込みとは言え「バカ」呼ばわりしている点、仕事上での上下関係を利用した本来の職務外の業務(勤務時間中に“セレブ”ママ友の子どものお守りを押しつけているところ、ヒモザイル研究生にすることなど)の強要、雇用者でありながら「こいつらの将来のことなんて考えたこともなかった」などと言うところ……などなど。このあたりは誇張や演出もあるでしょうし、第三者からは窺い知ることのできない作家とアシスタントの関係性もあるので、なんとも踏み込みづらいところではありますが、ひとつだけ確かなことがあります。東村先生はアシスタントさんたちの将来をちゃんと考えているのです。
前述の“セレブ”ママ友の言葉を受けて、東村先生は「今まで私は自分の原稿さえ上がればそれでよかったのだ」「こいつらの将来のことなんて考えたこともなかった」などと述懐するのですが、この言葉を額面どおりに受け取るわけにはいきません。たとえば以前にアシスタントだった『ZUCCA×ZUCA』(講談社)のはるな檸檬先生に「ヅカマンガを描いた方がいい」とアドバイスしたのは他ならぬ東村先生ですし、ニュースサイト「ナタリー」での師弟対談では、当時のはるな先生との関係をこのように語っています。
「家族ですね、完全に。もう妹のような感じで。だから『この子の将来どうしようか』とかはずっと思ってましたね。マンガ家志望の子なら『描け描け』って言って、マンガ描かせればどうにかなるんだけど、そうじゃないから私がもう『やめろ』って言ったんです。マンガ家になりたいんじゃないんだったら、ここにいてもあんま意味がないっていうか……」
作話の都合上、この方が流れが作りやすいから……と、「こいつらの将来のことなんて考えたこともなかった」といったような表現を採用したのだと考えます。となれば、アシスタントとの関係性も、作品中に描かれたとおりに受け取るのは危険です。パワハラ疑惑には検討の余地があります。