『ガラスの仮面』茶話会に見たファンの熱量―「紅天女問題」「月影先生の年齢」白熱の120分
例えば、冒頭の「マヤ……おそろしい子」の初出はいつだったんだろうという話題では、『ガラスの仮面』生き字引のような「読ム読ム」店長が、「初出は亜弓さんではなく月影先生のはず」と発言。1巻を調べてみると、確かに、一度見ただけの舞台『椿姫』を寸分の狂いなく再現するマヤを見た月影先生が「おそろしい子……!」と高笑いしています。その後、亜弓さんもシニカルに笑いながら同じ発言をしていますが、「初出は亜弓さんじゃなかった」ということに、「意外」と反応する参加者も。つまりマヤの演技は、誰が見ても「おそろしい子」と言いたくなる鬼気迫るものだってことですね。
熱気漂う店内
ほかにも新しい発見が。「速水さんが27歳」という設定は、大人になってから読み返すと「そんなに若いのか」と驚きですが、さらに驚愕だったのは、てっきり60代後半くらいだと思っていた月影先生が40代らしいということ。作中、何度も「ばばあ」「ばあさん」と周りから揶揄され、謎の病魔に冒されて血を吐いたり、心臓が「ズキッ」としたりしている月影先生が……実は40代。参加者たちからは、「月影先生が自分と同年代だったなんて」という声が漏れ、衝撃が走りました。1970年代には「アンチエイジング」などという言葉がまだなかったとはいえ、「40代であんなに老人扱いされる時代だった」という『ガラスの仮面』の時代背景にも新発見があったようです(しかしあらためて読み直してみると、終戦時にだいたい20歳くらいだったらしいので、連載が始まった76年には51歳という計算に。それでもびっくりですが)。
■「好きな男性キャラ」は一極集中
少女漫画好きの人には定番の質問ですが、茶話会で盛り上がったのが「好きな男性キャラ」について。たいていの人は「速水真澄さん」と回答していました。捨て子というアンニュイな過去、厳しく育てられた不幸な子ども時代、「紫のバラの人」と言い張ってマヤに対して素直になれないシャイなところ……。どこをとっても女性のツボみたいです。
『ガラスの仮面』は、雑誌掲載時と単行本で話が違うことでも有名。これは単行本未掲載の「マヤ、速水さんの家でお菓子を食べる」編。
一方、真澄と同様にマヤに恋焦がれる桜小路くんのことは、誰も何とも思っていない様子。なんの非の打ち所もなく、ひたすらマヤを思い続けていて、マヤがサボった井の頭公園のバイトを勝手に代わってくれるなど、本当に“いい人”なのですが、女性人気は低いようです。筆者としては、「ケーキを作るのが趣味」という、いい奥さんになりそうだけど、床上手でもなく、面白みのない同じ劇団の女性キャラに好かれているから、桜小路くんもつまらない男と読者に認識されているのではと想像します。参加者からは、「桜小路くんの母親と妹が意地悪だからじゃないですか」という意見が。マヤが桜小路くんに惹かれないのも「結婚相手としては面倒くさそう」と思っているからじゃないか、などという結論になり、マヤの「意外と現実主義」な一面も浮き彫りになりました。