「後悔しています」10年の婚外恋愛が発覚、そして離婚に至ったアラフィフ女性の孤独
「私がお風呂からあがると、彼とのメールを夫がプリントアウトして、リビングに座っていたんです。『これは何だ?』と聞かれました。妹の家に泊まりに行くと嘘をついて、彼の出張先についていった翌日でした」
絵に描いたような泥沼劇。しかし智美さんはこれを「神様が与えてくれたチャンス」だと語り、「夫に見切りをつける絶好の機会でしたからね」と微笑んだ。
そのメールを機に、智美さん夫婦は別居。2人のお子さんは当時すでに自立して家を離れており、智美さんから離婚の話を切り出すと、ご主人はあっさりと快諾したそうだ。1年半の裁判期間を経て、離婚成立。慰謝料もなく、紙きれ1枚の離婚だった。
しかし、智美さん夫婦の裁判が進行していく中で、自然と彼との連絡も途切れ途切れになり、離婚成立の数カ月後には、関係も自然消滅した。
「婚外恋愛って、お互いの家庭ありきで成立している人も多いと思うんですよ。私が離婚したことで、彼は『責任を負わずにおいしいとこ取り』ができなくなってしまいましたからね。最近、仕事でクタクタに疲れて家に帰って、子どもたちもいない家に灯りをつけるとき、『私、何やってたんだろう』って感じるんです。今倒れたら、誰が私を助けてくれるのかな、気付いてくれるのかなって想像すると、怖くて……。夫と離婚したことは後悔していないけれど、どうせほかの男の人と交際するんだったら、どうして独身者に目を向けなかったんだろうって後悔しています」
仕事に育児にと頑張ることに疲れ、心の拠り所がほしかった智美さん。しかしその疲労の原因となっていた“夫”というしがらみがなければ、彼との交際も始まらなかった。なんと皮肉的で、悲しい恋愛なのだろう。智美さんの影を帯びた表情が実に印象的だった。
(文・イラスト/いしいのりえ)