カルチャー
[連載]ここがヘンだよ子育て本!

頑張るママたちを追い込む、意識低い系育児・松嶋尚美の天真爛漫さ

2015/07/05 21:00

「つわり対策や、食べ物の好みに変化は?」「どっちもそんなになかった!」
「寝かしつけは大変じゃないですか?」「ふたりともそんな大変じゃないねん」
「子育て中にイライラしませんか?」「『えいっ!』がおまじない」

 「高齢出産ならではの悩みってありますか?」という核心的な質問にも、「食べ物の趣味が子供とまったく合えへん。もう私らは焼き魚とおひたしとかそんなんでええけど、子どもらは食べ盛りになっていくやん。これからハンバーグやとんかつやエビフライや言われても、私らには脂っこすぎて(笑)」と事実上は悩みなし。

 気負いのなさこそ松嶋が支持される部分だと思うのですが、その象徴が出産をつづったページです。出産は2人とも和痛分娩を選択した松嶋。和痛分娩とは、分娩に伴う痛みを麻酔の力で軽減させるというもので、まだまだ“おなかを痛めた我が子”信仰の強い日本では少数派です。意識高い系ママが和痛を選択する場合、その理由や反対勢力へのけん制をつらつらと書き連ねるものですが、松嶋は「だんなの誕生日と同じ12月24日に計画出産で和痛分娩するつもりやったの」とあっさり。長男は和痛の予定が急遽自然分娩になったものの、「当たり前やけど、自然分娩のジュマに対しても、和痛分娩のララに対しても、愛情たっぷりわき出てます」とこれまたあっさり出産日記は締めくくられています。和痛分娩も自然分娩も出産の一スタイルであり、出産や育児をフラットに捉える意識の高さがあればそもそも言い訳なんぞは必要ないはず。それを何ともなしにサラリとやり遂げる松嶋に、壮大な育児を語りがたるママたちは歯ぎしりするのではないかと思われます。よって、つべこべ言わない潔さはマックスの★10個!

 松嶋の子育てを一言で表すと「人の評価を気にしない」。いや、育児に人の評価があることすら意識していないのかもしれません。SNSなどで自意識モンスターがあふれる昨今、他人の目を気にしないことは意外難しいことです。「輝いているママ」か「頑張らないを頑張るママ」が商品になる時代、フツーの子育てをしたいママには居場所がないと感じられるかもしれません。そんな中で、終始子どもめっちゃカワイイ、この服めっちゃイケてる、このグッズめっちゃ便利~が貫かれる松嶋の本は、“ママ疲れ”したママの駆け込み寺になっているのもしれません。
(西澤千央)

最終更新:2015/07/05 21:00
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