カルチャー
[連載]ここがヘンだよ子育て本!

頑張るママたちを追い込む、意識低い系育児・松嶋尚美の天真爛漫さ

2015/07/05 21:00

 一方、「結婚してもしばらくは、子どもに興味がなかった」という松嶋が、子作りをスタートさせたのは結婚から2年後の38歳のとき。とはいっても、病院に行くのではなく「赤いパンツをはく」「水天宮に祈祷しに行く」「ベランダでタバコ吸いながら月に向かって『かわいい赤ちゃん早くおいでなー』って言うたり」とフリースタイル。一般的に高齢出産といわれる35歳を過ぎているにもかかわらず、1年半で妊娠を果たしたというのだから、極めて順調かつ幸運といえるでしょう。

 妊娠中も松嶋は自由。「甘いものもしょっぱいものも、あと白いごはんもおいしくってさ」と旺盛な食欲を抑えられずに、出産前もとんかつにマック。さらに陣痛がきているのに焼肉屋へ。体に良さそうな(しかしまずそうな)健康食をちまちま食べるデキた妊婦が見たら卒倒しそうな食生活です。

 「虫歯菌がだめらしいね」と言いながら「でも私が一番にしたかったからいいのだ~」と赤ちゃんにチュウしちゃう松嶋。私がしたいからするというこのスタンス。そしてそれで何とかなってしまうという現実。意識高めママたちの努力って……ということで、意識低い子育て度は★9つ。

■女は愛嬌! で乗り切ってきた人の邪気

 松嶋流子育ての特徴の1つとして、「昭和的ジェンダー観」があります。「珠丸のサッカー教室レポート」というページで、「男の子とは」と語っている松嶋。「実は、珠丸には格闘技を習わせたいなと思ってたの。男の子って弱いといじめられたり絡まれたりするやん。(中略)男やし強いに越したことないやん」「柔道は受け身やからケンカになったとき勝たれへんと。で、空手、ボクシング、キックボクシングを比べたときに、手も足も使えるキックなら、ふたりを相手にケンカしても勝てるんちゃうかと」。言葉の端々どころかか、全ての言葉からやんちゃ地域で育った昭和のスピリッツを感じさせます。しかし将来を考えてインターナショナルのプレスクールにも通わせるなど、男児の教育には比較的熱心な様子。

 長女の「ララはインターには入れへん予定」で、その理由は「外国に嫁に行ってしまう(と夫が言っている)から」。松嶋自身も「女の子はニコニコしていればいいからさ、頭よくなかっても、愛嬌で乗り切れ~って思ってる。甘い?」との考え。強い男、かわいい女……こうしてジェンダーとは無邪気に再生産されるものなのですね。その無邪気な邪気こそ、松嶋が芸能界で成功した術ということで、昭和ジェンダー度は★8つにしときます。

■子育てへの悩みも言い訳もナシ!

 「妊娠/出産/子育ては、こんなに大変であり、一方でこんなに尊いことであり、そんな一大事業を私はこうして乗り越え、だからこそ母親として大きく成長できた」……育児に込められたそんなストーリーを自己実現の一助としてきたのが、いわゆる意識高い母親たちです。しかし松嶋は育児の大変さも尊さも自らの成長も語ることはありません。

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