「帰るときは三本足で帰ってった」珍宝館の名物館長・ちん子氏に学ぶエロと健康の表裏一体
■性と生を実感できる場所
(左)だんだんとチャーミングに見えてくる展示品(右)春画を大迫力で楽しめるのも魅力だ
ぐるりと回って1時間強。50代前後の夫婦が目立つ中、20代の若い男女のグループや母親世代のグループなどの来客も目立つ。普段は性に消極的のようにも見えるベテラン夫婦が、館長の巧みなシモトークに声を上げて笑っていたのに驚いた。
自らを「マンチョー」と名乗る館長。女がそう名乗るにはかなり勇気がいるのではと、筆者は感じていた。しかし筆者の懸念はヨソに、館長は実にのびのび、生き生きと仕事を全うしており、それが来館者から性の後ろめたさを取り除いている。
また館長はトーク中、珍宝館の裏には姉妹店である老人ホームがあると語り、「この間連れてきたおじいちゃん、90歳。来るときは杖ついて来たけど、帰るときは三本足で帰っていった。立派なチンポです」と来館者の笑いを誘っていたが、あらためて「性」と「生」は表裏一体で、切り離すことはできないと思った。性欲は“健康のバロメーター”。たぶん筆者の母親と同世代である館長の肌が、ピチピチと潤っているのを見ると、年齢に縛られずに性と向き合うことが、人生を楽しむことにもつながる――真っ青な群馬の空に、はきはきとした「チンポ」「オマンチョ」という言葉と、老若男女の明るい笑い声が響きわたる光景は、温かく平和であった。
リピーターになる来館者は、館長の人柄に惚れている人も多いという。そんな名物館長にお話をうかがってみた。
館長のトークにはだまし絵クイズコーナーも
――珍宝館を開館したきっかけを教えてください。
館長 もともとは祖父が趣味でコレクションしていたものなんです。しまっておくと痛んでしまうからここを開きました。珍宝館開館当時は、現在お土産ショップに使用している場所だけでしたが、徐々にコレクションを増やしていきました。
――名物となっている館長のトークはいつ頃から始めたんですか?
館長 ここができてのが37年前、説明を始めたのはそれから2~3年たってから。バスから降りる老人会のおじいちゃんおばあちゃんの手を引いて、展示物の説明をしたのがきっかけ。「ここで拝むと、おじいちゃんのチンポがバッキンバッキン勃つからねぇ、おばあちゃんもしっとり」なんて説明して……その後、バスの運転手に「バスの中がてんやわんやの大騒ぎだった」と教えてくれて。たいがい2回トイレタイムを取るところが、ワイワイしてるから1回でよかったなんて言ってました。
なんとも言えない愛嬌がある
――館長さんの一番のおすすめの展示物はなんでしょうか?
館長 一つひとつに思い入れ、思い出がありますので甲乙つけがたいですが……。最近のものだと、黒保根村の高橋さんが作った自然木の作品。最初は猛禽類を作っていた方でしたが、珍宝館がきっかけで男女の作品を作るようになったそうです。
――来館者の方の年齢層が広くて驚きました。てっきり若い人ばかりかと。
館長 最初の6~7年はお年を召した方が多く来館していましたが、テレビや雑誌で取り上げられてからは若い方も増えましたね。3:7くらいの割合で若い方が多いです。
――自分のおじいちゃんおばあちゃん世代の人が、下ネタで笑うところは見たことないのでとても新鮮でした。
館長 入るときはイヤだったという人もいますよ。特に年配の方は、性って隠れて見るものですから……説明を聞いてイメージが変わった、いやらしさがなく楽しめた、と言われたときはうれしいです。笑ったり反応を示してくれる方だと、こちらもうれしいですけれど、年に1人や2人、怒る男性のお客様はいますね。50近い40代くらいの人かな。「下品だ」とか「こんなバカな仕事、よくしてられる」とかさ。
――女性の方が拒否反応を示すかと思っていました。
館長 女性のお客様は笑っちゃう。こういうものを見るチャンスが少ないから。ここに来て元気が出るのは、男の味を知ってるからでしょう(笑)。
――館長さんも性とか男に対しては結構積極的ですか?
館長 消極的(笑)。そりゃあ若い頃は体が要求するから積極的になるけれど……私なんか金積まなきゃモテませんでしたから。エロと年を取っても元気でいられることは関係ありますね。80歳前後で、年に2~3回定期的に来て道具を買っていく男のお客さんもいますが、元気だよ。肌がきれい。彼女もつれてきたり……まぁ来る度彼女は違うけど。(性は)人間の原点ですからね。年を取っても男ですし、女ですからね。女は生まれて灰になるまで女ですよ。
(取材・文/いしいのりえ)
珍宝館
住所:群馬県北群馬郡吉岡町上野田3366
開館時間:8時30分~17時00分
問い合わせ:0279-54-5956
公式サイト