ジャニーズの深刻な“課題”――「ミーハー層」不在を解決する、永瀬廉という可能性
今夏開催のイベント「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION」の応援サポーターとして結成された新ユニット「Mr.King vs Mr.Prince」(ミスターキング vs ミスタープリンス)。
6月1日まで開催されていた公演『ジャニーズ銀座』の「チームA」としてステージに立った6人であり、世間からは、ジャニーさんならではのヘンテコなユニット名への反応のほか、「顔面偏差値が高い」「可愛い子が多い」などといった好意的な声が多く出ていた。
もともと「第21回Myojo Jr.大賞2015」の「恋人にしたいJr.ランキング」でぶっちぎり1位を獲得した岩橋玄樹をはじめ、人気上位のJr.が中心に集められているユニットだけに、順当な顔ぶれではある。だが、中でもしつこく注目したいのは、同Jr.大賞2位であり、通称「キンプリ」の中で現在MC担当になっている永瀬廉だ。
永瀬については、昨年3月、5月にも記事で取り上げてきたが、何が特別って、近年ジャニーズが抱える深刻な問題――「オタク受け」と「一般受け」との大きな乖離を解消する可能性を持っているところだ。
近年、ジャニーさんのお気に入りといえば、「顔が整っていても、ちょっと濃すぎる昭和風味」が多かった。また、「オタク受け」は、美形ではないタイプが多く、世間が認知するジャニーズも「ブサイク売り」「芸人売り」が近年の主流。そんな中、永瀬はこの1年ほどで男っぽくなってしまい、やや濃くなったとはいえ、涼しげな目元と鼻筋、スラリと長い手足を持つ「いまどきの普通の美形男子高校生感」がある特異な存在だと思う。
この「時代とズレていない美形」で「普通の男子高校生感」ある存在というのが、実はありそうで、なかなかない。そもそも「普通なのにとびきり美形」ということ自体が一種のファンタジーであり、しかも、それが社長あるいは事務所にプッシュされるというのは、かなり稀有な例だ。
実際、昨年末の『NHK紅白歌合戦』でSexy Zoneのバックとして一瞬アップで抜かれただけで、女子中高生のファンを大量に獲得した。「キンプリ」結成会見でも「翳のある美少年」などとネット上で話題になり、注目されている。一般への感触は上々である。と同時に、永瀬には、投票系で頑張る、そしておそらくお金も払う濃いオタクも大量についているのが、大きな強みだ。
もともと少女漫画の美少年キャラのような名前に加え、父親の仕事の都合で全国を転々としてきた「転校生」で、「人見知り」で「美形」で「左利き」で「関西弁」であること。それだけでオタク受け要素は十分なのに、「人見知りが激しいくせに、一度懐くと、しつこいくらいになる重い性格」「緊張しいで、『ザ少年倶楽部』(NHK BSプレミアム)初期出演時などは、しゃべる前に大きく深呼吸していたこと」「美形なのに、写真を撮られるのが下手で、素人感満載なところ(雑誌等でも残念写真多数)」「バズライトイヤーの布団を使っているお子ちゃま感」「体が細すぎて体幹が弱く、ダンスはフラフラながら、頑張って少しずつ成長しているところ」「ど天然だが、勉強はわりとできるところ」「お世話になった先輩たちがジャニーズWESTとしてデビューした際、『まいど!ジャーニィ~』(BSフジ)で感謝の手紙を読み、かなりの内容の薄さにもかかわらず、号泣しすぎて読めなくなっていた素直さ」などなど、オタクを飽きさせない面白さがギュッと詰まっている。
おまけに、父親の仕事の都合とされているが、4月に大好きな関西から東京に引っ越して東京Jr.になったことから、東京Jr.たちと無理やり距離を詰めようと、自分だけのニックネームをつけて呼ぶなどの一生懸命なコミュニケーション下手具合も、オタク心をつかむポイントである。
正直、スキルはまだまだだし、オーラもない。でも、社長や事務所と、一般ミーハー層と、濃いオタクの3方面を制覇できたら……ジャニーズの今後が変わるかもしれないなどと、密かな期待を持ってしまうのだ。
(田幸和歌子)