生理のせいで心身ボロボロ? 宋美玄に聞いた、“めざめ体温”=基礎体温の重要性
女性にとって切っても切れない悩みの1つに、生理の問題があります。腰痛や倦怠感などを併発する人が多く、また、痛みを伴っても「こんなものだろう」と毎月我慢している人も少なくありません。しかし、自分の体のリズムを知ることで事前に対処できることもあるんだそう。そこで、産婦人科医学博士である宋美玄(ソン・ミヒョン)先生が実践女子大学で学生に向けて行った“めざめ体温”の勉強会に参加してきました。
◎婦人科系の不調が増えている理由
「健康力を高めよう!女子として知っておきたいこと」と題した同セミナーでは、生理周期の基礎知識や基礎体温の初歩的な知識を中心に、女性の体のリズムについて講演が行われました。まず、宋先生は2011年に女性の初産平均年齢が30.1歳となり、日本の歴史史上初めて30歳に突入したことに触れ、これが現代女性の不調と関係があると指摘します。
「昭和20年代は20代前半までに6~7人の子どもを産んでいたため、生理と排卵がない期間がありました。しかし平均出初産年齢が30歳を超えたことからもわかるように、現代の女性は初潮から20年近く、休む間もなく生理と排卵を続けています。それにより、卵巣ガンや子宮体ガンにかかるリスクが高まったり、子宮筋腫や子宮内膜症を発症したりと、生理の重症化や不妊の原因になる婦人科系の不調が起こりやすくなっています」と、警鐘を鳴らします。
◎排卵日を中心に変化する女性のリズム
本来、女性の体のリズムは生理初日から次の生理までの間で、約1週ごとに4つの期間に分けられるそう。生理中である1週目はホルモンがリセットされる“リフレッシュ期”。生理が終わった2週目は排卵に向けてエストロゲン(卵胞ホルモン)という女性ホルモンが増える時期で、肌の調子が良かったりポジティブな気分になれたりと、一番過ごしやすい“ハッピー期”だそうです。この週の終わりに排卵を迎えてからの3週目は、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が著しくなって便秘やむくみを引き起こす“リラックス期”に入り、プロゲステロンがピークを迎える生理直前の4週目は、疲れやすい、訳もなくイライラするなど心身ともに不安定になりやすい“スロー期”とのこと。
このように排卵を中心とする女性ホルモンの分泌量の変化が心身のコンディションに大きく影響するため、宋先生は「自分のリズムを知るためには基礎体温をつけることが有効」としています。
学生からの質問コーナーも設けられた
「排卵後に分泌されるプロゲステロンは代謝を上げるので、分泌量が増えると基礎体温は0.3度くらい高くなります。そのまま2週間ほど高温が続き、妊娠しないとガクッと下がって生理が始まります。このように、基礎体温をつけることでホルモンバランスや生理周期がわかるようになるんですよ。生理開始から2週を過ぎても体温が上がらなければ排卵されていない可能性があるなど、不調を見つけることもできます」と、基礎体温の有用性を語ります。
また、朝起きてすぐに測る体温であること、習慣化することで自身の健康管理・美容への意識が目覚めていく行為であることから、宋先生は基礎体温のことを「めざめ体温」と新たに称しました。基礎体温というワードは、一般的に妊活している女性向けという認識が強いため、「めざめ体温」とすることで一般女性にも意識的になってもらいたいんだそう。
頻繁に頭痛を起こす人が、発症するタイミングと基礎体温表を照らし合わせたところ、生理周期によることがわかった例もあり、基礎体温をつけることでコンディションがわかるだけでなく、採血でもわからない情報が得られたり、婦人科系の病気を発見できることもあるため、「妊娠を希望する人がつけるというイメージの強い基礎体温ですが、若いうちからちゃんと“めざめ体温”を測って健康管理に役立ててほしい」と、宋先生は学生たちへ話しました。
◎めざめ体温を測るときの注意点
ただ、基礎体温の計測には注意が必要とのこと。「基礎体温は1度に満たないわずかな温度差で変動します。起床してから背伸びをするだけでも変わってしまうので、代謝を一番反映する、目覚めてすぐの体温を測ってください。枕の下など手の届くところに体温計を置いておくのがおすすめです。最近では10秒で測れる“婦人用体温計”もあるので、それらを用いれば簡単に測定できますが、それでも測り忘れてしまったら、次の日で大丈夫。無理せず続けることが大切です」と。婦人科系の病気や生理の相談で婦人科を訪れるときにも、3か月ほどの基礎体温表があると診断がスムーズになるそうです。
自分の心身をケアできるのは、他でもない自分自身。月に一度の生理と前向きに付き合っていくためにも、“めざめ体温”習慣を始めてみるのもいいですね。