中年女性がボランティア活動に励むのはなぜ? “関係性”に発揮される、おばさんの能力
中でも一番大きな理由は、その年代の女性たちのコミュニケーション能力が、男性やほかの年代に比べて高い、という点ではないかと思います。といってもそれは特別高度なものではなく、他人に気軽に声をかけられる、他人の言葉に共感的に反応できる、場の雰囲気を和やかに保つことができるといった能力です。
こういうことは、若いときはなかなかスムーズにできないものです。頭ではそうした方がいいとわかっていてもできない。困っている人を見て「あなたの窮状はこれから来ているから、あれをすればいい」ということは指摘できても、「大変でしょう、なにかお手伝いできることあったら言ってくださいね」と、ごく自然な感じで歩み寄るには、少々の年季が必要です。
中年女性の多くは、仕事・家事・子育て・親戚や近所とのおつきあいなど、人によって濃淡はあれ、さまざまな水準のコミュニケーションを日常的にこなしてきています。その中で、小さな子どもが1人でいたら声をかける、顔見知りにはこちらから会釈して挨拶する、家族の近況や健康状態を尋ねる、たわいない会話を楽しむ、もらい物があったら近所にお裾分けする、などのささやかな人間関係を維持しようという習慣もついていきます。
苦手な相手にいやなことを言われても、笑顔で冗談っぽく返す技。相手の心情を察しながら、変なところはスルーし、いいところは盛大に褒める技。味方はさらに味方に、敵はなるべく作らない。こうしたコミュニケーション能力が、おばさんになればなるほど磨かれてピークのレベルに達するのが、だいたい50代くらい。
ボランティアおばさんも、一朝一夕にできあがるわけではないのです。さまざまな社会奉仕活動にいそしむ中年女性たちが元気でいきいきしているのは、長年磨いてきたこの共感・共生能力を、あますところなく発揮できているからではないでしょうか。
(大野左紀子)