「DRESS」婚活エッセイマンガの打ち切りに感じる、“独身アラフォー”というくくりの限界
とまあこのように、幸せの方向は人それぞれ。どんな環境にあっても不満は出ます。自分の環境にあった幸せの見つけ方、納得の仕方があるわけですね。雑草学から見る雑草はまさにそんな感じで、与えられた環境の中で、どう生き残るかを切磋琢磨しているモノなんだそうです。
甘粕りりこさんの連載「生涯嫁入り前」でも、幸せについて語られています。幸せというのは、ごろっと「幸せ」という形で転がっているものではない。試合の勝敗のように「幸せ」と「不幸せ」とに分けられるものではないと言っています。同じような環境にあっても、幸せだと思える人は思えるし、思えない人は思えない。幸せというのは環境ではなく考え方なのだと。
雑草学も甘粕さんも、どちらもそう珍しいことを言っているわけではないですが、なかなか考えさせるものがありました。アラフォーともなると、既婚か未婚かでも違うでしょうし、子どもの有無に加えて、仕事の内容も年収も違うとくれば、人によってまったく環境が異なってきます。そんな中で幸せを感じる方向は異なってくるでしょうし、同じ価値観を持つのは難しいでしょう。
ということは、アラフォー雑誌である「DRESS」が、どんな価値観を提供したとしても、それが響くパイというのはそれほど多くないのかもしれません。
■そもそも本当に結婚したかったの?
そして、毎回突っ込みを入れていた連載「婚活人生泣き笑いゲーム」が、今月号には掲載されていません。前回・前々回は、「肉食女子に男を食う秘訣を聞く」という内容で、婚活エッセイのはずなのに婚活もせずに済ませていましたが、とうとう連載終了なのでしょうか。当初は「1年限定で婚活」と言っていましたが、1年どころか半年しか持ちませんでした。婚活ブームだからといって、なんでもかんでも婚活させれば面白いものが描けるというわけではないことがよくわかります。
どうにも尻切れトンボで終わってしまったこの企画、作者の方は本当に結婚したかったのか? というそもそもの疑問が湧いてきます。ここからは想像ですが、「編集部に依頼されて婚活エッセイマンガを描いてみたけど、やっぱりやる気が出ませんでした」ということだったのではないでしょうか。
婚活ってとても時間と根気のいることで、仕事もプライベートもそっちのけでやらないと、婚活らしい婚活はできないようです。自分から提案した企画なら、もっとガツガツ取り組むように思いますし、半年で切り上げ、ということをしたら信頼をなくしますから、自分からはやめないでしょう。となるとやはり、編集部からの提案で始まったのではないかと思ってしまいます。「婚活を人から提案されてやってみた」では、ああいう終わり方になるのも仕方ないのかもしれません。。
一口で独身アラフォーといえど、「結婚しない」人もいれば、「結婚したいけどしていない」人もいるなど、そもそもの読者対象であるアラフォーが細分化されていて、そのニーズが掴みにくい上に、編集部発信の企画センスがぶれていたのでは、そりゃ迷走するだろうなとしみじみ感じた号でした。
(増井涼子)