独身、一人暮らしの娘と老いた親との距離感を描く3作――“正解”のないそれぞれの選択
■どんなに体がきつくても、母親と“同居しない”選択をした娘
『おひとりさまの遠距離介護けもの道』(メディカ出版)一方、重くなりがちな現実をクールに描いたのが『おひとりさまの遠距離介護けもの道』(メディカ出版)だ。著者・たけしまさよさんの母親は、老人性うつからあらん限りの病気を併発し、「つらい」「痛い」と不平不満愚痴弱音を吐き続ける。ところが、母親は70代後半から80代であるはずなのに、愛らしい童女のように描かれている。なんだか妙な感じなのだ。かわいい老女から、否定的な言葉をぶつけられ続けても、それほど大したことではなさそうな気もするが、作品の中盤で、母親が童女の姿をしている理由が明らかになる。その理由は本書を読んでいただくとして、それを知って、たけしまさんのつらさがようやく理解できた。さもありなん。それは同居できないわ。
そう、たけしまさんは一人娘だと思われるが、電車で2時間ほどの距離に1人で住み、頑なに同居を避けている。そして仕事をやりくりしながら、毎週末母親の元に通い介護をするのだ。それがどれほど大変なことかは想像に難くない。しかもBGMは、母親の絶え間ない不平不満に弱音に愚痴だ。毎週末の通い介護でどんなに疲れようと、月曜には自宅に帰り、母親と離れることがたけしまさんには必要不可欠なのだ。「もう帰るの?」という母親の哀切極まりないまなざしに、一瞬ためらいはするものの、その一瞬の情に流されてしまうと一生を棒に振ることになる。それは、たけしまさんがこれまでの人生で嫌というほど学んで身につけてきた、母親との距離なのだろう。
毎週通い介護をしながら、母親の入院、手術の段取りまで完璧にやったたけしまさんはあっぱれだ。介護が必要となった母親との関係に悩んでいる人には、このコミックは本当に役に立つと思う。後ろめたく思わなくていい。近くにいることだけが親孝行じゃない。
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