カルチャー
青木正一氏×渡辺明日香氏の“原宿”対談【後編】

“HARAJUKU”はデコラで時が止まっている――再び原宿が息を吹き返すために必要なこと

2015/04/22 16:30
FRUITS」2015年5月号(ストリート編集室)

(前編はこちら)

――原宿のストリートファッションの勢いがなくなった転換点は、リーマンショックによる不況やファストファッションの台頭によるものと考えていいのでしょうか?

渡辺明日香氏(以下、渡辺) いえ、たまたまその時期が重なってはいますが、直接の因果関係はわかりません。確かに景気が悪くなると、大人はお給料が下がってファッション消費にあまり投入しなくなるのは事実ですが、逆にバイトが増えるので若い子たちにはそんなに影響はないという面もあるからです。

 転換点といえば、90年代後半に空前のストリートファッションブームがあり、当時10代だった人が2000年代を少し過ぎた頃に社会人になって原宿を離れ、次の世代になだらかにバトンタッチされて層が変わった時期があるかと思います。2000年のちょっと後くらいです。

青木正一氏(以下、青木) 雑誌の「mini」(宝島社、00年創刊)が売れた頃でもありますね。それに先んじて裏原ブームがあって、男の子の間では、ファッションというよりも、限定品とか、コラボとか、誰々の知り合いが作ったブランドだとか、ゲーム的な楽しみ方が生まれました。裏原は、ファッション的にはTシャツ・パーカー・スニーカーという同じ格好なので、僕には全然おもしろくないんですけど(笑)。

渡辺 エイプ(A BATHING APE(R))の偽物がさんざん出回って、そういうのを着ている人たちが大いばりで原宿を歩いていた時期ですね。

青木 「FRUiT」を創刊した1997年当時は、男の子も女の子も派手で、同じタイプのファッションだったんですけど、98年頃に男の子の裏原ブームが本格的となり、02年頃から女の子も、男の子のファッションにマッチする「mini」のようなシンプルなファッションを好むようになっていったんです。「FRUiTS」的には暗黒時代で、その時期から僕は撮影をしなくなって、撮影はスタッフワークになったんです。5年間くらいはシンプルファッションが支配的で、10年くらいは影響が続いた印象です。ただスタイリストが運営するセレクトショップが影響力を持っていたりしたファッションなので、当時の「FRUiTS」を見返してみると、今のニューヨークのモデルたちのファッションのような、かなりレベルの高いファッションです。ただ原宿の持つ自由度や独自性はなかった。そうそう、その時期に創刊からずっと「FRUiTS」の表紙に入れていた「HARAJUKU FREE STYLE」という表記を外しちゃいました。

渡辺 X‐girlやMILKFED.に代表される、さっぱりとしたファッションですね。

青木 インターネットで洋服が買えるようになったり、スマホのSNSが自己表現のツールになったり、ファッション業界も大変ですね。まさかスマホにファッションが打撃を受けるとは誰も思ってなかったでしょう。いつも同じ服しか着ない「スティーブ・ジョブズの呪い」なんじゃないかな(笑)。それに女の子のファッションは、現在もシンプルで地味めの方が男の子だけでなく、友達にもウケがいいんでしょうね。服飾系専門学校生にも、おしゃれな子がほとんどいないですよね。それはダメだと思います。

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