「まるで昭和のバカ殿」日本唯一の秘宝館・熱海秘宝館の“誰もが笑える”エロの実像
精巧なマリリン・モンロー人形に驚く
なるほど熱海秘宝館、意外と真面目ではないかと思っていると、筆者の期待は真っ向から裏切られた。そこには『七年目の浮気』のワンシーンをかたどったマリリン・モンローのマネキンが。手前のハンドルをくるくると回すと、マリリンのスカートがふわりとめくれ上がってパンティ姿が拝めるというアトラクション。金髪美女のはずが、陰毛が黒々しくて笑いを誘う名物アトラクションである。そして、ここから先は熱海秘宝館の“バカバカしさ”が全開だ。誰しも知っている名画がヌードになるだまし絵、ビーチパラソルの下で寝転ぶトップレス女性の人形が、スイッチを押すと“ご開帳”するアトラクションなどなど、思わず「え~何これ!」「くだらなすぎて笑える」と口にしてしまう。
「イヤ~ン」という喘ぎ声が飛び交う
熱海秘宝館には、このようにスイッチを押すと何かが起こる仕組みのアトラクションが多いのだが、そのスイッチの土台はオッパイの形をしており、スイッチが乳首になっている。普段、同性の乳首に触れる機会がない私でも、ここでは思いっきり女の乳首に触れることができるのだ。乳首という“秘められた部位”がモロ出しになり、それがスイッチとなっている……そこにはいやらしさはなく、解放的な笑いが生まれる。シニア層の3~4人組の女性客が、この乳首スイッチを押して大爆笑しているところも見た。
■「可愛い」「美しい」エロで女性客を魅了
そんな熱海秘宝館にも、異色アトラクションがある。それが「新説 浦島太郎」だ。浦島太郎物語を熱海秘宝館的な解釈で説いた映像作品なのだが、浦島太郎役の男優と竜宮城の乙姫様役の女優とのセックスシーンが流れ、そのままアダルトビデオのようなのだ。ほかのアトラクションと比較すると、かなりエロ色が強い。カップル客の女性が、少々面食らっている姿も見たが、あの誰もが知っている「浦島太郎物語」をエロくアレンジするという企画の意図自体には、やはり熱海秘宝館のベースとなる“おバカ感”はしっかりと守られている気がする。
新アトラクションの「魔女のシーツ」(左)と「秘密の昼下がり」(右)
しかし、このおバカ感だけが、熱海秘宝館特有の“女性の楽しめるエロ”というわけではない。ほかの秘宝館が閉館を余儀なくされる中、今年2月に、熱海秘宝館は新アトラクションを2つお披露目した。その1つが「魔女のシーツ」。細い穴を覗くと、魔女のエッチなアニメーションが覗き見できる。イラストを描いたのは、熱海出身のイラストレーター・クロセシンゴ氏。少女マンガのようなタッチともいえる、柔らかな曲線で描かれるクロセ氏のイラストは、女性でもまったく抵抗感がなく、「可愛い」と感じられる。もう1つは「秘密の昼下がり」。愛らしい顔立ちのラブドールが、さまざまな仕掛けが施された部屋の中で回転するというアトラクションで、こちらのラブドールは、かのオリエント工業が製作しているという。顔や体の作りはもちろん、肌の質感までもが美しいラブドール……その技術力の高さには、男女問わず惹きつけられてしまうはずだ。
というわけで、たっぷり楽しんで約1時間。館内はあちこちで激しい喘ぎ声が飛び交っているのだが、決して生々しいものではない。甲高い「イヤ~ン!」という声は、『志村けんのバカ殿様』のお色気シーンを彷彿とさせる。明るく笑えるエロを楽しむ――昭和の深夜番組のような雰囲気が熱海秘宝館には色濃く残り、そこには“女性が楽しめる”というより、性差を取っ払った“誰もが笑える”エロがある。