カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「VERY」4月号

女性が輝く社会の片棒を担いでいた!? 「VERY」に見る“輝けないのは自己責任”の圧力

2015/03/26 18:00

■内田樹と高橋源一郎が吠える!!

 今月号は、読み物ページにも注目していこうと思います。気になったのは、「内田樹×高橋源一郎特別対談『女性が輝く社会』ってどうよ?」です。以前だったら、「女性が輝くことに対して、『VERY』が疑問を抱くって何事?」と思ったかもしれませんが、今ならこの企画に込められた「VERY」の思いがわかります。「自分自身が輝きたいだけなのに、その輝きを人に利用されるのはまっぴらだ」ということですよね。

 この企画、もともとは「『少子高齢化、アベノミクスの不調、人口減による人出不足』といったさまざまな問題を『輝く』とか『活躍』といった言葉で体よく(VERY)読者世代に押し付けているのでは」という疑問から始まっているそうです。それに対して、高橋さんは「かなり気持ち悪い」と率直な感想を述べた上で、戦争中、多くのフェミニストの女性たちが戦争推進派だったのは、「婦人参政権」のためであったと、上野千鶴子さんの論を紹介します。そして、今の保守的な女性政治家が、「輝く女性」を推進するのも、女性が「政治」に関わることができるからではないかと推理します。

 内田さんも同様で、「女性が輝く」というのは、「ただの立身出世主義」によるものであり、またそれを推進する女性たちは、「どういう女が男に『かわいがられるか』知っていて、それを演じている」「支配的な価値観の中で上位に格付けされないと納得できない。権力と金と威信がないと、どうしても社会的承認を得た気がしない。それが『輝く』ことだと本人が思っているなら、もう好きにしたら(笑)としか言いようがないね」と語ります。

 これを読んでまず思い出したのが、先ほど少し触れた「ルミネ」のCMです。ボーダーのトップスのサバサバファッションOLが、男性の同僚に「女子力高めたら?」といわれるというストーリーで、筆者も気持ち悪さを覚えました。単純に「オシャレくらい私の好きにさせてよ」という思いから、「気持ち悪い」という感情がわき上がってきたと思っていたのですが、この内田さんと高橋さんの対談を読んだとき、もしかしたら、「男のオレが承認してあげると言ってるんだから、素直に輝きなよ」というメッセージを受け取ったからではないかと思ってしまいました。

 さらにこの対談がすごいのは、「VERY」に対しても鋭い指摘をしているところ。編集部からの「『VERY』世代が、現在の社会的問題を押しつけられているのではないか」という質問に対して、内田さんが「『押し付けられてる』って不満が出てこないように、高市(早苗)さんたちを出してきて、『ほら、こんなふうに輝いてる女性もいますよ。あなた方がくすぶってるのは、才能と能力が足りないからでしょ?自己責任でしょ?』という話に持って行きたいんじゃないですか?VERYもその片棒担いでるんじゃない?かっこいい旦那がいて、賢い子どもがいて、本人も美人で、仕事ばりばりこなして、オシャレで……というような手の届かないロールモデルを毎月出してきたら、ふつうの読者は『自分がぱっとしないのは自己責任かも』って思うよ」と返答しているのです。これには、「VERY」の「ぎゃふん」という声が聞こえたような気がしました。

 「今の社会の問題を押し付けられてママはつらいよ」と言いつつも、内心では「今のこの世知辛い世の中で輝けるママである私ってやっぱりすごい」と思っている……そんな「VERY」の二面性が、この対談によって明らかにされたのではないでしょうか。素敵なママという表面を取り繕うだけでなく、自己の内面をどんどん掘り下げていく「VERY」、やはり最高に面白い雑誌だと思わずにはいられませんでした。
(芹沢芳子)

最終更新:2015/03/26 18:00
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