「優しい春の魔法にかかったみたい」春ポエム連発、「美人百花」の不可思議な点とは?
このご時世に、こんなに「女の子」であることや「春」の暖かさを信じられるって、ある意味幸せなことかもしれません。ただ、裏を返せば、現実をあんまり見たくないという「おめでたい」ところがあるのは……。でも、よく考えたら「ポエム化社会」が話題になったときも、「人々がつらい現実を見ないように、社会にポエムがあふれるようになったのでは」という説もありました。「美人百花」も、そういった理由から「ポエム」が多用される雑誌なのかもしれません。
■誰のためのオシャレなのか?
ただ、そんな一見夢見がちな「美人百花」も、「可愛くて甘いだけはそろそろ卒業」と、アラサーという自分の年齢については自覚しているようです。「アラサー美人の流行まとめ」というページでは、アラサー読者が最近ハマっている「清楚で知的な」ものを紹介しています。
誌面によると、「上品で知的で清楚に見えるから、パステルブルーのお洋服」を着たり、「和小物で奥ゆかしい女性」を演出したり、「髪色はマジメなダークカラーのストレート」を選ぶのが、アラサー美人の今の気分だそうです。また、美容に関しては「ナチュラル志向の“ありのまま美容”をはじめ」、「ヘルシーになるために自己投資してます」だとか。
こうした読者の興味のページを見ても、雑誌全体を見ても、やはり先月指摘したように、この雑誌には「恋愛」や「結婚」や「男」の影がほとんどありません。例えば、インタビューページだけでなく、着回しダイヤリーのようなフィクションのページにすら男性のモデルが出てこない。
かといって、雑誌「LARME」(徳間書店)のように、徹底的に“女の子だけ”の世界、“女の子だけ”の楽しみを見つけたいという潔さは感じません。実はどこか読者の価値の中に、「異性に見られること」が潜んでいる気配は確かにするのです。思っていたよりも、欲望の在り方が複雑な雑誌……それが「美人百花」であると気付きました。「美人百花」の隠された欲望とはなんなのか……次号も以降も探っていきましょう。
(柴朋美)