湘南ライフ疑似体験に見た、読者の「年収1,000万円以下」の現実を見抜く「VERY」の鋭さ
また、清澄白河の「サードウェーブコーヒーショップ」もオススメしていますが、こちらは単純に今の話題を抑えている印象。東京に住んでいなければ、清澄白河という地名にピンと来ないはずなのに、あえてそれを打ち出すのは「VERY」らしい絶妙なセレクトではないかと思いました。
そして「家族で湘南ライフをちゃっかり疑似体験!」も面白い提案です。湘南は、芸能人やオシャレな職業の富裕層が移住するというイメージが強い地域。一部では「実はもう撤退し始めている」といううわさも聞きますが、「VERY」妻には、まだまだあこがれの地なのでしょう。しかしポイントは“疑似体験”というところ。一説には、「VERY」で提案されるようなライフスタイルを送るためには、世帯年収が1,000~2,000万円は必要といわれていますが、実際の読者はそれよりも下なのが現実。とすると、湘南にセカンドハウスを持ったり、移住するのは難しいだろうと編集部が見越した上で、“疑似体験”と銘打ったのでしょう。あこがれと現実を両立する、まさに“ちゃっかり感”に感心してしまいました。
■モードもネオコンサバもほぼ同じ!
今月号のファッションページには、「私はこれで、モードを始めました」「関西読者の新しい波!ネオコンサバ派のすべて」という企画が。しかし、パッと見、モードとネオコンサバの違いがわからない。というのも、モードもネオコンサバも、アイテム自体は「トレンチコート」「スウェットパンツ」「スリッポン」などどれも同じなのです。
よく読んでみると、「モード」という人も、もともとはコンサバファッションを好んでいたとのこと。パンプスをスニーカーに変えたり、バッグをクラッチに変えるなどの工夫をしてみたところ、「モード」になれたというのです。
また、「ネオコンサバ」も、言わずもがなコンサバがベースになっています。もともと関西の読者は、「甘口コンサバ」が多数派だったとのこと。しかし最近のトレンドを無視できず、かと言ってコンサバっぽさも捨てきれない……そんな葛藤の末、色使いにニュアンスカラーを入れたり、メークを気を付けることで「コンサバ感をキープ」しながら、トレンドファッションを楽しんでいるというのです。正直、「VERY」における「モード」と「ネオコンサバ」の違いは、詳しく説明をしてもらわないとわからない……確かに、「ネオコンサバ」ファッションを見てみると、心なしかヒールのパンプスが多いような気もしますが。
この後、別のファッションページでも「ボーダーの達人になりたい!」という企画があるのですが、こちらでも「マンネリ」「男の子みたい」と言われるのを避けるために、あえてボーダーにヒールを合せたり、フェミニンなフレアスカートなどを合わせたりしています。流行のユニセックスなアイテムを着て、女から「ダサい」と思われたくない、けれど男目線も気にしているから「女っぽさ」が損なわれるのは絶対に嫌……「モード」「ネオコンサバ」など、一見輪郭のぼやけたファッション企画が生まれるのは、そんなファッションにおける読者の葛藤を色濃く映し出した結果なのかもしれません。
(芹沢芳子)