サイゾーウーマンコラム訪問看護師の抱えるジレンマ コラム 介護をめぐる家族・人間模様【第48話】 「家族と住むと汚部屋は掃除してもらえない」訪問看護師の抱える介護保険のジレンマ 2015/02/01 19:00 介護をめぐる家族・人間模様 Photo by BONGURI from Flickr 座って仕事をすることが多いので、椅子は大事だ。「寝たきりを防ぐ椅子選び」というセミナーに60代の先輩と出かけようと計画していた。ところが先輩、皮肉にもとある小劇場の椅子に3時間座り続けて、腰を痛めてしまったとのこと。建て替え前の歌舞伎座の椅子もひどかったが、小劇場の椅子も長時間座るにはきつい。シニアが活動的に過ごそうとすると、映画や演劇も増えてくる。となると、もう少し椅子のことも考えてほしい。 <登場人物プロフィール> 沢田 早苗(37) 首都圏在住の訪問看護師。夫、小学生の子ども2人と暮らす ■お金持ちは有料老人ホームに入っている 沢田さんは、訪問看護師だ。訪問看護ステーションから、高齢の利用者宅を訪問している。担当している地域は、首都圏の比較的高級な住宅地だが、築40年以上になる県営団地もあり、利用者はその住民が大半だという。 「お金持ちは、さっさと有料老人ホームに入っていますよ。私たちが訪問するのは、5階でもエレベーターのない古い団地の、狭い一室。夫婦2人暮らしかひとり暮らしの方がほとんどですね」 介護保険は問題も多いが、沢田さんが担当しているような人たちにとっては、かなりいい制度だと思っているという。 「とにかくできるだけ長く、できれば死ぬまで自宅で過ごしたいと考えている、お金のない人にとっては、介護保険はやはりいい制度なんだと思いますよ。現に今どれだけの人が介護保険で助かっているか。カツカツの生活だとはいえ、私たちが訪問することで、自宅で生活し続けられているんですから」 沢田さんの突き放すような口ぶりは、ときに冷淡にさえ聞こえる。利用者の生活に踏み込まず、これくらいの距離を保っていないと続けられないんだろう。そんなことを思いながら、淡々と話す沢田さんの言葉を聞いていた。沢田さんは、訪問看護師になる前は高齢者専門病棟に勤務していたという。 12次のページ Amazon 『親を、どうする? 介護の心編 (コンペイトウ書房)』 関連記事 「手厚い介護は誰のためなのか?」“高学歴ヘルパー”が抱える懐疑心「夫が亡くなったから、今の幸せがある」母と妹を呼び寄せたシングルマザー実母の介護を撮り続ける娘・関口監督――認知症の心を描く『毎日がアルツハイマー2』の福音「親子の愛憎劇の幕引き、憎いなら憎めばいい」親の介護で繰り返される業母をお墓に入れられない理由とは? 認知症の母親を見送った息子の戸惑い