“性”潔癖症がAVエキストラに――撮影現場を通して見えた“男に消費される”嫌悪感の正体
■AV女優という仕事に嫌悪感がない理由
Photo by M Huy photography from flickr
少女マンガやティーンズラブコミックを読むと、女は愛のないセックスでは満足できないのだということがわかる。セックスをして、万が一孕んで社会的弱者になったとき、自分を守ってくれるもっとも信頼できる保険が「男の愛」だからだ。愛のないセックスはそのリスクを女一人で背負うことになる。それでは安心してセックスを楽しめないだろう。
でも男の場合は、必ずしもセックスに愛は必要ではなく、「自分には不釣り合いなほど若くてかわいい女」と「無責任にやりちらかしたい」というのが願望のようだ。たいていの台本はそういう設定だ。「男と女の間の深い川」をあらためて感じた。
では一方で、自分の体を消費されることを選んだAV女優についてはどう感じたのか。
「AVのエキストラやったんだ」というと、多くの人に言われるのが、「エロいことするの?」 である。自分自身意外だったが、こう聞かれるのが、結構ショックだ。どんなに生活に困ろうが、たぶん自分は性を売ることはない。すでに書いたように、愛のない性行為にはリスクしか感じられず、自分をすり減らし、絶対に心を病む自信があるからだ。
でも、自分の体を商品にする女性がいることはアリだと思う。セクハラや痴漢に遭って、無料で欲望のはけ口になるくらいなら、きちんとビジネスにして換金した方がいい。それに、どんな人だって、親からもらったもので金を稼ぐのだ。高度な教育をもらった人はその知恵で、美しい容姿をもらったら、その体で。なにを換金するかは本人の考え次第。それを他人の私がとやかく言う気はないし、体を張ってがんばっている女優さんを見ると、応援したくもなる。
私はやはり、自ら選んで消費されることをビジネスにする女優さんはいいけれど、消費する男性側の妄想にはどうにも嫌悪感があるようだ。
ところで、男性が夜中に期待に胸膨らませてAVを見ているところに、突然知り合いが登場してくると結構萎えるらしい。それこそ自分としては本望だけど、もしかしたら、そんな不幸に遭遇してしまう知り合いがいるかもしれないので、あらかじめ謝罪しておこうかな。ごめんなさい、でも責任は取りません。
和久井香菜子(わくい・かなこ)
ライター・イラストレーター、少女漫画研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、語学テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。街で見かけたおかしな英文から英語を学ぶ「Henglish」主宰。