荒唐無稽なドラマ『学校のカイダン』でひとり気を吐く、神木隆之介の突出した演技
■圧倒的な存在の神木隆之介
だが、それでも見てしまうのは、彗を演じる神木隆之介の演技が突出しているからだろう。彗はツバメが何か言うと100倍にして返すという饒舌な少年だ。たとえば第1話のバス停の場面。学校でのいじめに悩むツバメに対して彗は
「お前に友達なんかいないだろ。それとも何か。お前を使用人扱いしているご主人さまたちのことかな?」
「ほら奴らの声が聞こえるよ。金もない奴らがタダ飯食って、学校の格と偏差値下げてやがる。早く消えろ! そんな言いぐさおかしいだろ。あんな連中の言いなりになって悔しくないのか? やり返そうとは思わないのか?」
「このまま我慢し続けるのか? もっと痛い目に遭っても我慢し続けるのか? 何で怒らない? 何で叫ばない? 何で戦おうとしない? 風向きを変えたくないのか? 風向きを変えたいなら戦うしかない。戦って……、全部ぶち壊せ」
と、まくしたてる。
映画『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグが演じたマーク・ザッカーバーグを彷彿とさせる早口喋りだが、あの独善的な口調と表情を見ているだけで、彼がいかに、人付き合いが下手で、孤独だったのかが伝わってくる。このマシンガントークが全編続くのだから見ていて圧倒される。おそらく台本の半分以上は神木の台詞なんじゃないかと思う。
神木隆之介は2歳から活躍する子役出身の俳優で、文字通り神童と呼ばれる少年を演じることが多かった。普通、子役で売れてしまうと、次のステップに行くのは中々難しいものだ。しかし、うまい具合に身長が伸びたこともあってか、神木は10代後半に入っても役者として活躍し、21歳の今でも、人気が揺らぐ気配はない。
今作の彗や『SPEC』(TBS系)のニノマエのようなカリスマ性のある天才少年役を演じる一方、映画『桐島、部活やめるってよ』で、気弱なオタク少年を演じてもハマっており、映画『るろうに剣心』シリーズでは、激しい殺陣も披露している。どの役も少年の面影が残っているため、学生役が演じられなくなる20代後半こそが本当の壁かもしれないが、ここまで演技がうまいと、あっさり乗り越えてしまうのかもしれない。
ドラマ本体に関しては、今後に期待という感じだが、神木のマシンガントークは一見の価値ありだ。
(成馬零一)