荒唐無稽なドラマ『学校のカイダン』でひとり気を吐く、神木隆之介の突出した演技
『学校のカイダン』は、日本テレビ土曜9時枠で放送されている学園ドラマだ。通っていた高校が閉鎖となったため、特別採用枠(特サ枠)で明蘭学園高等学校に編入した春菜ツバメ(広瀬すず)。しかし、学校は「プラチナ8」と呼ばれるセレブの生徒たちが牛耳っており、ツバメのような特サ枠の生徒はひどい差別にあっていた。無理やり生徒会長に就任させられたツバメは、プラチナ8のイジメを受けるが、彼らの行為は学校に隠ぺいされてしまう。無力感に打ちひしがれるツバメ。そんな彼女の前に車椅子の謎の少年・雫井彗(神木隆之介)が現れる。彗はスピーチライターとしてツバメと契約し、学校に革命を起こそうと語りかける。ツバメは彗の支援の下、特サ枠の生徒たちと共にプラチナ8が牛耳る学園に反旗を翻す……。
『学校のカイダン』を見ていると2つの学園ドラマを思い出す。1つは、イケメンドラマの元祖とも言える『花より男子』(TBS系)。もう1つは白岩玄の原作小説を木皿泉の脚本でドラマ化した『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)。『花男』は学園の中がピラミッド社会となっていて、頂点にいるセレブグループ・F4のリーダー・道明寺司(松本潤)に庶民の女子高生・牧野つくし(井上真央)が、戦いを挑むことから恋愛関係に発展していくラブコメディだ。原作は日本の少女漫画だが、ドラマは台湾でドラマ化され大人気となった『流星花園−Meteor Garden−』を逆輸入する形で作られた。
『花男』は韓国、中国でもドラマ化された人気作だが、おそらく、極端な金持ちと貧乏人のドラマというのは、巨大な格差が広がっているアジア圏では説得力のあるものなのだろう。しかし日本では、あくまでファンタジーとして受け入れられた。
対する、『野ブタ。』における教室の生徒たちは表面上では対等な関係で、だからこそ人間関係のもつれや場の空気によって、誰もがいじめの被害者となってしまうという、捉えどころのないものだ。こういった生徒同士の空気の読み合いによって出来上がっている見えない階層はスクールカーストと呼ばれているが、F4やプラチナ8のようなわかりやすいスーパーセレブがいる世界よりも、『野ブタ。』の世界の方が日本ではリアルなものである。
そして『学校のカイダン』は、学校や生徒の描写は『花男』なのに、『野ブタ。』のスクールカースト的価値観を持ち込んでいる。どうにもドラマ全体がちぐはぐに見えるのは、正反対の世界観の学園ドラマを混ぜてしまったためだ。生徒手帳に書かれた生徒会規約を利用して、言葉の力で学校を変えていくというアイデアは悪くないだけに、その前提となる学校の描写が荒唐無稽なのは実に勿体ない。