『ごめんね青春!』“悪人”を拒絶し居心地のよさに回収されるクドカンドラマの弱点
『ごめんね青春!』(TBS系)が12月21日に最終回を迎えた。関ジャニ∞の錦戸亮を主演に迎えた本作は、仏教系の男子高とカトリック系の女子高の合併にまつわる騒動を描いたドラマだ。
錦戸が演じたのは男子校の教師・原平助。学生時代に好きだった、カトリック系の女子高に通う蜂矢祐子(波瑠)を親友の蔦谷サトシ(永山絢斗)にとられた腹いせで、ロケット花火を飛ばしたことが原因となり、女子高の礼拝堂を火事にしてしまったという秘密を抱えている。脚本はクドカンこと宮藤官九郎。『あまちゃん』(NHK)以来、一年ぶりの連ドラとなる本作は、TBSで数々のドラマを共に手掛けてきた磯山晶プロデューサーと組むとあって、多くのドラマファンから注目された。
TBS制作のクドカンドラマは、『木更津キャッツアイ』のような男同士のコミュニティの居心地の良さを描いたものと、『マンハッタンラブストーリー』や『うぬぼれ刑事』のような、男から見た女の得体の知れなさを描いた恋愛モノの2種類に分類できる。『ごめんね青春!』はどちらかというと後者の作品で、男子高と女子高という同性だけで完結していた二つの世界が、合併することで起こるドラマを描くというのは、クドカンドラマの居心地のよさに対して、本当にそれでいいのか? という宮藤自身による自己言及のようでもあり、新しい一歩を踏み出そうとした意欲作だと言える。
■二面性が魅力の俳優・錦戸
今回、主人公の平助を錦戸が演じたのは、宮藤の指名だったという。錦戸は一見、気さくな好青年に見えるが、得体の知れない鬱屈を抱えているという役を演じることが多い。
恋人に対して暴力を振るってしまう、区役所の児童福祉課に務める及川宗佑を演じた『ラスト・フレンズ』(フジテレビ系)は、そんな錦戸の危うさが全面開花した問題作だった。初のクドカンドラマ出演となる『流星の絆』(TBS系)では、幼少期に家族が惨殺された有明泰輔を演じた。普段は社会に溶け込み気さくな三枚目として振る舞っている泰輔が、怒りを爆発させて「遺族が笑ったっていいじゃん」と苛立つ姿もまた、強烈な印象を残している。
そのためか、ほかのドラマでどれだけ気さくな青年を演じていても、いつ錦戸が爆発してヒロインを殴るんじゃないかとハラハラしてしまう。平助も温和で優しい教師だが、放火犯としての過去があるため、暗い鬱屈を抱えている。観音像に宿っている死んだ母親(森下愛子)と対話する場面などはユーモラスに描かれているが、まるでアルフレッド・ヒッチコックの映画『サイコ』の殺人犯のようで、かなり危ない。