カルチャー
どれだけ「いい女」を装っても、中身が空虚な主婦の寄る辺なさ。映画『紙の月』
2014/12/20 20:00
ひとりの地味な主婦が、巨額横領事件を起こす。ショッキングな内容に聞こえるが、映画はじわじわとそこに至る過程を描いており、この主婦の行動が特別に罪深いものではなく、ひとりの女がこの事件を起こしてしまった心理に、納得できる作品になっている。
宮沢りえ演じる平凡な主婦、梨花は、銀行の外回り営業として契約社員で働いている。顧客からの評判も良く仕事は順調。田辺誠一演じる夫は、妻がクレジットカードを持つことに難色を示すような性格であるが、一応は優しく、一見すると梨花は恵まれた生活を送っているようだ。
そんなある日、梨花は裕福な顧客の家を訪問し、大学生・光太(池松壮亮)と出会った。梨花を「素敵な女性だ」と認め、頼ってくる光太。彼との逢瀬がスタートし、徐々に梨花の隠れた欲望が芽吹いてゆく。それは若い愛人男性から「いい女」と思われたい、というほんの少しの見栄だった。
最終更新:2014/12/20 20:00