Sexy Zone・中島健人、『黒服物語』での迫真の芝居を上回る“アイドル性”の長短
■アイドル・中島と俳優の融合点
物語は深夜ドラマでは定番の夜の世界を舞台としたもの。黒服の仕事や、キャストの仕事といった店全体の経営の裏側を描いた部分は新鮮だが、基本的にはキャバ嬢同士の戦いを描いた作品で、そこにヤクザや危ない男たちが絡むというものになっている。そんな強面で粗暴な男たちと一癖も二癖もある美女たちの夜の世界に、童貞でおどおどとした気の弱い彰が放り込まれるのだが、とにかく序盤は、彰が怒られてばかりなのが見ていてしんどい。
また、少し仕事に慣れて自信を持ち始めると、彰が調子に乗って「つけ回しをやらしてくれ」と自分から名乗り出るが、案の定、現場のことがわからずに大失敗してしまう。何も知らない若者が業界のルールがわからないまま翻弄されていく姿は、さながらキャバクラ版『新世紀エヴァンゲリオン』(テレビ東京系)といった感じで、中島の線の細いおどおどした外見と少年の面影を残したかわいい感じは、『エヴァ』の主人公・碇シンジみたいだ。一番のみどころは、キャバ嬢役に、佐々木希、AKB48・柏木由紀、入山杏奈、筧美和子、黒川智花といった豪華な女優を揃えているところ。しかし、それがありがたいというよりは、中島も含めて、何でこの人たちは、このドラマに出ているのだろう、という余計なことばかり考えてしまう。
彰が同僚の黒服にいじめられるシーンは生々しく、佐々木との濡れ場も迫真の演技で、役者としてかなり熱演していると言える。だが、彰が決め台詞の「夜の魔法をお客様に」といった後に「キラーン」という効果音が入る場面の方が、中島の魅力は出ていると思う。
今の中島は、暗くて傷つきやすい知的な少年役と、アイドル性を全面に出したキラキラの王子様役との狭間で、俳優としてどちらに向かわせるべきか、事務所サイドが迷っているように見える。『黒服物語』は、前者を狙ったのだろうが、『JMK』のような、明るいアイドル性が生きるようなラブコメの方が、中島には向いているのかもしれない。
(成馬零一)