「愛してるよ! 部屋、片付けろよ!」、LGBTの子を受け入れた両親の新聞投稿が感動的
近年、世間からかなりの理解を得られるようになったLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)。カミングアウトする人は年々増加傾向にあり、シンシア・ニクソンにエレン・デジェネレス、リッキー・マーティンら、LGBTであることをオープンにしている大物セレブも少なくない。
米トランスジェンダー法政策研究所によると、アメリカの人口の2~5%はトランスジェンダーであるとのこと。実に、800万人を超える成人男女がトランスジェンダーだという計算になるのだが、彼らに対する差別はいつまでたってもなくならない。アメリカに限らず、キリスト教の信仰のあつい国では同性愛をタブー視することが多く、LGBTは陰湿ないじめや激しいバッシングの標的になることが少なくないのだ。
そんな中、オーストラリアに住むとある夫婦が地元新聞の誕生欄に投稿したメッセージが、ネット上で大きな話題となっている。
メッセージは、12月2日付のブリスベンの新聞「クーリエ・メイル」の、赤ん坊が生まれたことを報告する“誕生日欄”に掲載された。「撤回報告―ボガード家―」という見出しで、「1995年に娘エリザベス・アンの誕生を報告いたしましたが、本人から『違うよ』と告げられました。あっちゃー! 悪かったねぇ。というわけで、あらためて我々の素晴らしい息子カイ・ボガードをご紹介させていただきます。なにがあっても愛しているよ! 部屋、片付けろよ!」というもので、ブロンドのショートヘアに、黒いスーツを着た若者の写真が添えられている。
トランスジェンダーであることをカミングアウトした我が子を受け入れると共に、ユーモアを交えながら無償の愛を注いでいくことを世間に伝えたこのメッセージに、心打たれる読者が続出。その一人が新聞を写真に撮ってTwitterやFacebookなどのSNSに投稿したところ、「最高の親だね!」「素晴らしい」「親の深い愛を感じる」と大絶賛され、瞬く間に拡散されたのだ。
オーストラリアの地元紙に投稿された小さなメッセージが、ネットで大きな話題となっていることについて、テレビ局のインタビューを受けたカイの母親は、「なんで、ここまで話題になるのか……びっくりしてます」と大きな体を縮こませながら笑顔でコメント。新聞に投稿したのは、「そうねぇ、男の子なんだってカミングアウトしたことは息子にとって、とても重要なことなのだろうなって感じたんですよ。だから祝福しようと思ったの。“100%あなたのことをサポートするからね”って、我が子に伝えたかっただけなんです。切り取って、思い出としてずっと持つこともできるしね」「投稿する数日前に、『女の子として生きるのはやめるからね』と告げられたばかりで、まだこの状況に慣れてないけど、小さいころからほかの子とはどこか違うなと感じていましたしね」と優しそうな笑顔を浮かべながら語った。
新聞を見たカイは、「一瞬びっくりしたけど、まぁ、ママならそういうことやるなって」とクールにコメント。「10歳のころから、違和感を持っていて」「学生のころは、いじめとかあるし、なかなか言えなかった」「でも親には昨年の今ごろからカミングアウトしようと、タイミングをうかがっていた」と淡々と語った。
「部屋は片付けた?」という質問には、「エレンに言われたらやるけど」と、ここまできたらエレン・デジェネレスからの連絡を待ってやるというような強気の発言をしたカイだが、後日受けた「クーリエ・メイル」の取材に対しては、「先週、なにもかもが変わった。自分は自分のままだけど、数日前よりもさらに自分らしくなったし、とても自由な気分」と発言。カミングアウトできたこと、親がサポートしてくれたことに対する感謝の気持ちを素直に表していた。
カイのことを、「男の子には見えない。どうみても女」と意地悪く言う声もあるが、親の暖かいサポートと無償の愛を受ける彼に怖いものはないだろう。LGBT差別はそう簡単にはなくならないだろうが、我が子を愛するボガード夫婦のメッセージを読み、LGBTに対する意識を変えた人がいると信じたい。