『ぬ~べ~』ら「情けない男」役で光る、関ジャニ∞・丸山隆平が持つ“暴力性”の魅力
■内在する暴力性を見せる、俳優・丸山の魅力
いろいろ批判の多いドラマ版『ぬ~べ~』だが、丸山隆平のぬ~べ~役に関しては、文句なくハマり役だと思う。普段は不器用で情けないが、いざとなると“鬼の手”で戦うぬ~べ~の隠し持った強さを見事に演じている。面白いのは玉藻先生を演じる速水との対比だ。玉藻先生は料理が得意なイケメンで、女子にも大人気。対してぬ~べ~は、生徒たちから馬鹿にされている。ジャニーズなのに、ダサくてモテない男を演じているのだ。
丸山を面白いと思ったのは、初主演となったドラマ版『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(テレビ朝日系)だ。20代後半で彼女がいないダメ男・田西敏行役を演じており、映画版で田西を演じた峯田和伸と比べても遜色なかった。『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)に登場するかまぼこ工場の会社員・田中くんの好青年ぶりも印象に残っている。
ただ、その好青年ぶりの裏に抑圧された男の暴力性が時々、見え隠れし、本作ではそれが“鬼の手”という形で爆発する。関ジャニ∞・錦戸亮もそうだが、普段は温厚で優しいけど、それだけに内なる暴力性が抑圧されていて、いざキレると「こいつヤバイんじゃないか」という雰囲気を持った俳優がジャニーズには多い気がする。
『ごめんね青春!』(TBS系)の錦戸、『黒服物語』(テレビ朝日系)のSexy Zone・中島健人、そして『平成舞祭組男』(日本テレビ系)で情けないサラリーマンを演じる舞祭組など、今期のジャニーズ主演のドラマを見てみると、イケメン役ではなく、モテなくて情けないが誠実な男性を演じることが多いと気付く。本作でもイケメン役は速水であって丸山ではないのだ。
この傾向は2000年代のクドカンドラマやバラエティ番組におけるTOKIOや嵐の見せ方にすでに表れてはいたが、いつの間にかジャニーズ・アイドルが、情けない男性役を独占するようになってきているというのは、奇妙な現象だと思う。
(成馬零一)