ご近所から“昼顔妻”とうわさされる美貌のアラフィフが、若い男とセックスを買い続けるワケ
■再婚をすることはもうない
娘の親権を取り、大学進学までの費用を支払うことを、ご主人に確約させた。一緒に暮らしていた一軒家を出て、横浜の一等地にある分譲のタワーマンションに移り住んだが、その支払いはご主人が行っている。今では専業主婦である礼子さん。離婚前からの趣味であったベリーダンスの教室に週3回ほど通い、保健所で殺処分を待つ犬を里親が見つかるまで一時預かりするというボランティアをしながら日々を過ごしている。そして月に数回、娘が留守にしている間、自宅に男を招いて逢瀬を交わしているというのだ。
「出会い系サイトで知り合った男性を買っています。素性は私もよく知りませんけど……年齢は30代前後で、多分もともとホストなどの女を悦ばせる商売をしていた男です」
長期にわたるご主人との裁判で心身ともに疲弊してしまった礼子さんは、友人に教わった「出会い系サイト」で男性との出会いを楽しんでいる。
「恋愛は求めていません。ただ裸で抱きしめてくれる相手が欲しかった。でもそんなことを言うと、同世代の男性には『裏があるんじゃ?』と訝しがられる。その点、年下の子は便利ですよ」
人恋しくなったときに連絡をし、時間が空いているとひょっこりマンションへ現れて、抱きしめて、挿入してくれる。「私みたいに、幼い頃から心が渇いている女でも、誰かとつながれている気がするんです」と、礼子さんは目を伏せた。
礼子さんの住む街は決して狭くはない。だが、若い男と腕を組んでレストランに入れば、どうしても目に留まる。
「『あの男、誰なの?』なんて聞いてくるママ友が増えました。あのドラマの影響でしょうね。『なんでもない』なんて言っても納得してくれないから……しばらくは、おとなしくしているしかありません」
今現在、礼子さんはバツイチの身ゆえ、自宅に男を連れ込んでもなんら問題はないだろうが、もしかしたら、その男は既婚者かもしれない。しかし彼女は、「そこには興味がない」とあっさりしている。
「子育てやボランティア疲れがピークになったときに部屋に来て、抱きしめてくれれば、それでいいんですよ。うちの子たちは甘えるばかりで、甘えさえてくれませんから」
そう言って礼子さんは、2匹の小型犬の写真を見せてくれて、目を細めた。礼子さんに、再婚の意思はあるかを訊ねてみた。前のご主人のように金銭的条件ではなく、心から信頼し合える男性と出会えたとしたら、また結婚をしたいと思うのだろうか。
「ありませんね」
間髪を入れず、笑い声交じりに礼子さんは答えた。
「心から信頼できる相手なんて現れないって、この年になると気付きますよ。それに、結婚する必要もありませんから……私は元主人からもらったマンションと慰謝料を切り崩しながら、娘を育ててボランティア活動をして、たまに男を買うことができる。今が、とても幸せです」
結婚時代、まわりのママ友よりセックスの頻度が高かったこと、そして今も周囲に“昼顔妻”ではないかと怪しまれるほど、女としての魅力を備えていること――そんな女としてほかの人より秀でているという事実は、礼子さんを、安心させているのではないかと思った。彼女が欲しいのは家庭でも、男でもない。みじめな思いをすることはないという、心から安心できる日々が欲しかっただけなのかもしれない。
(文・イラスト/いしいのりえ)