コラム
[連載]悪女の履歴書

ママ友の子どもを殺めた“ママ”の実像――「音羽幼児殺害事件」から現代へ

2014/11/08 19:00

 92年、みつ子の方から副住職に連絡を取り、2人は急速に親しくなっていく。そして29歳の時に結婚した。しかし、新婚生活は順調というわけではなかった。みつ子は“寺に嫁いだ嫁”でもあった。結婚後、そして出産してからも夫の職場である寺院で手伝いを続けている。家事と育児をしながら、夫の世話と寺の仕事――。さらに人間関係の心労もあった。副住職夫と住職との関係は決して良好というものではなかったからだ。みつ子は2人の間に入って、ストレスばかりを溜めていったという。

 みつ子は周囲に過剰に適応しようとするが、一方で自己主張がへただ。ノーと拒否できない。そして不満を外に漏らすことさえ「恥ずかしい」ことだと思っていた。規範意識も異常とも思えるほど高い。

 みつ子は長男の出産を「実家でしたい」と思ったが、夫には強く言えず、しかたなく都内で出産する。しかも出産から1週間で寺の仕事に戻り、過労とストレスで再入院までした。そして出産後3カ月ほどたつと、夫への不満が高じ、ちょっとしたことでイライラしたが、それを強く夫にぶつけることはできなかった。そのかわりに日記に、荒い筆致で夫の悪口を書き連ねた。

(後編につづく)

最終更新:2019/05/21 18:52
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