聞くだけでOKの“怪”スピリチュアル美肌術が、コンプレックス女を暴走&陶酔させるワケ
そしてなぜか、福田さんがPH会にハマってゆく過程を読んで、「評判の悪い男とつきあうことになった女」を思い出した。「私だって警戒してるよ?」と言い訳しつつも、「すっごく私と合うの☆」と公言してしまったら、一直線に突っ走ってしまう感じ……歴代のワル男好きな女友達の顔が浮かぶ。自分に自信のないコンプレックスの強い女にとって、「女であることを実感させてくれた男」という存在は、周りの評判が悪いほど「本当の彼を知っているのは私だけ!」と特別視してしまうものである。Nothing’s gonna stop 恋する女。評判の悪い男が得てして「キケンな魅力」を備えているように、TDEが不思議なパワーで人を惹きつけるのは私でも理解できた。だって、1回の施術で小顔になれるんだよ? これで少しも揺れない女っている!?
さて、いよいよいよいよ実践パートだ(残りページはわずかで焦燥感が高まっている状態)。「エネルギーの感じ方」に始まって、「肌再生の術」や「心の窓拭き」、念願の小顔になれる「肌締め法」などが紹介されている。どれも「イメージで顔の皮膚を剥がし、それを揉む」(肌再生の術)など図解入りでわかりやすく、すぐに実践できて楽しい。元から私は「科学で証明できないサムシング」にウットリできる夢見気質(漫画家だもの)。「向かい合わせた両手の平の間にボールを持つような感覚を体験してみる」との説明にも「あ、できたかも☆」と、その気になりやすかったのが、楽しめた要因かもしれない。これまた「この出会い、運命かも☆」と思い込んだ方が盛り上がる「恋」と似ている気がする。
もっと実践パートを知りたかったなー……と物足りない気持ちのまま読了したが、最後にメインのお楽しみ「聴くだけで美肌になるCD」の鑑賞だ。本の冒頭にちょっとだけ解説されているのだが、このCDそのものにエネルギーが入っているので「音を小さくしても無音でも効果が発揮され」るのだそうな。無音でもいいって……CDにした意味は何よ!? 思わず演奏したミュージシャンがかわいそうになり、ちゃんと音を流して聴いてみた。全5曲で約20分。「就寝前のリラックスした時が効果的」との勧め方で予想がつくように、どの曲も管弦楽の優雅な調べ。曲が変わったことすら気づかないような……うん、無音でいいのはありがたいね☆
それからというもの、仕事の合間にCDを流しながら、「肌再生の術」をしてみたりするのが習慣となった。効果のほどはわからないが、やってる間、とても気分がいい。なんせ「今、私は気を感じている☆」という特別感が、神秘の女心をくすぐってくれるから。男子だったら「かめはめ波心」を満たしてくれるかもしれない。このまま続けたらエスパーになれちゃったりして(漫画脳)☆そういえば、J子の方はどうだろうと連絡を取ってみると「私、あの本を読んでから、あらためてSK‐2を使うようになったんです☆」と昂奮していた。え、SK‐2以上の劇的変化を求めていたのでは?
J子はこの本を読んで、どんどんエネルギーの世界へ埋没してゆく作者の姿に「自分で気分を盛り上げていかなきゃいけないんだ!」と気がついたらしい。そして「私は今、SK‐2を使っている、いい女☆」と思いながら、綾瀬はるか気分で使用すると、肌の調子がどんどん良くなることを実感したそうな。「思い込みのエネルギーって大事ですよね!」とはJ子の弁だが、その通りだと思う。新しい世界に踏み出す原動力、踏み出した先で躍進する機動力、「思い込み」はそれらの源となりえるだろう。いわずもがな「恋」においても。未知なる世界や男に飛び込みたい方は、勇気ある女の実例の1つとして、この本が参考になるかもしれないね☆
最後に下世話な蛇足を。美容本を読むとどうしても気になる著者のお顔。この本の作者である福田さんの著者近影は、なんだか地味な印象で意外だった。「かわいらしい顔立ちなのだから、もっと盛ればいいのに……ってゆうか、美容本は盛るのが常識じゃない?」という疑問を女性誌の編集にぶつけてみたところ、「スピリチュアル系の読者って、バッチリ化粧する人を警戒するんですよね」と教えてもらった。「本来の自分」やら、それこそ「ありのまま」を尊重する世界では「まつげパッチリ☆」などの化粧は「アンナチュラル=よくない」とみなされるらしい。「わざと地味にしてるんですよ」との説明に、「世の中、全てに理由があるものなんだなー」と、深く感じ入りました。
大久保ニュー(おおくぼ・にゅー)
1970年東京都出身。漫画家。ゲイの男の子たちの恋愛や友情、女の赤裸々な本音を描いた作品を発表。著書に『坊や良い子だキスさせて1』(テラ出版)、『東京の男の子』(魚喃キリコ、安彦麻理絵共著/太田出版)などがある。
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