メジャー俳優化への“抵抗”を捨て、攻め続ける小栗旬にハマった『信長協奏曲』
■メジャー俳優への抵抗を捨てた小栗
出世作となった『花より男子』(TBS系)の花沢類を筆頭に、小栗の資質は、隠し通すことのできないイケメン俳優としての華やかさにある。しかし、役柄のイメージが固定されることに危機感を感じたのだろうか、役柄のイメージの紆余曲折が激しく「俺はただのイケメン俳優じゃない!!」と、言いたいがためだけに、個性的な脇役を演じていたことも多数あり、当時はそれが痛々しく感じた。
しかし『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)あたりから、華やかさに対する照れが抜けたのか、自分の中にあるメジャー感を、積極的に打ち出すようになっていく。その意味でカリスマ性のある織田信長はハマり役だと言える。それは、近年の小栗が俳優業界全体を見ていることとも無関係ではない。
2014年8月に発売された「クイックジャパン 115号」(太田出版)の小栗と鈴木亮平の対談の中で、小栗が俳優の労働組合を作って労働条件の改善をするべきだと考えていることや、借金をしてほかの俳優も共同で仕えるスタジオやトレーニングジムを兼ねた稽古場を作ろうとしている、といった話が出てくる。また、若手俳優に対する言及も多く、その姿は天下統一のために、優秀な人材を集めてさまざまな改革を行った信長の姿とも、どこか重なる。
また、対談の中で小栗は、今こそ、自分が監督した『シュアリー・サムデイ』を見てほしい、と語っている。公開当時は酷評された本作だが、出演俳優を見ると、小出恵介、鈴木亮平、勝地涼、綾野剛、ムロツヨシ、吉田鋼太郎といった今をときめく俳優たちが多数出演しており、キャスティングにおける小栗の俳優を見る目の確かさにはあらためて驚かされる。そんな小栗が主演を務めるからこそ、『信長協奏曲』にこれだけの豪華俳優陣が集まったのだ。
(成馬零一)