イカ天を彷彿とさせる古くささに痺れる、アメリカ初の少女マンガ『Rock and Roll Love』
とはいえ、『Rock and Roll Love』を読むメリットだって大いにある。話が単純で主人公のミサコがやたら感情的なおかげで、日常英会話に役立ちそうなフレーズが山盛りなのだ。「Oh,God! I’m so lucky! He’s so nice and sweet! And look at him,he’s so cute!」とまあ、ずっとこんな調子なので、辞書も使わず1冊読み切ることができるだろう。この作品は、英語だからこそ日本人には意義がある。英語学習ツールとしてお勧めだ。
ちなみに同作者の『Detective Jermain(名探偵ジャーメイン)』も読んだが、高校で謎の事件が起こり、それを解決しようとするジャーメインと、彼女の幼なじみたちの恋愛が絡む、ミステリータッチの物語であった。しかしラストの謎解き部分、ミステリーでは一番重要な部分だけど、何度読んでも意味がわからなかった。なんの説明もなく他人のパソコンのパスワードを解明して侵入に成功してるようだし、突然、「犯人はお前だ!」的な発表があるのだが、なんでそう思ったのかイマイチわかんないし、結局なんだったかというと、犯人は頭がおかしくなってました、というまさかの放り投げ。ミステリーがそれでOKなら、松本清張はあんなに調査構成に苦労しなかったでしょう。美形の兄とイチャイチャするために人が死ぬというサスペンスのメイ作『七星におまかせ 』(http://cyzowoman.jp/2012/07/post_6231.html)が超大作に思えてくるほど、アメリカにおける少女マンガ文化は、発展途上である。最後に、『Detective Jermain』は謎解き部分の英単語が少々難しいので、これレベルの英語が読めるのなら、『ハリポタ』とか『ダレンシャン』とかがお勧めです。
■メイ作判定
名作:迷作=0:10
和久井香菜子(わくい・かなこ)
ライター・イラストレーター、少女漫画研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、語学テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。街で見かけたおかしな英文から英語を学ぶ「Henglish」主宰。