カルチャー
[連載]マンガ・日本メイ作劇場第37回

イカ天を彷彿とさせる古くささに痺れる、アメリカ初の少女マンガ『Rock and Roll Love』

2014/10/26 16:00

 一切伏線や引っかかりのないストレートな話である。漫画としての絵のクオリティにしろ、ストーリーにしろ、日本の漫画スクールに応募したらせいぜいCクラスの出来映えである。 一番気になるのは、少女マンガらしく恋愛メインのストーリーなのに、男子キャラがどれもイケメンに見えないことだ 。髪の毛はベタベタしてそうだし、顔もシャープじゃないし、2次元キャラに目の肥えた日本人女子たちがクリスやザックに夢中になるには、相当な妄想力が必要そうだ。それにしてもアメリカにはすでに日本の少女マンガが上陸していて、『NANA』や『君に届け』(ともに集英社)などの人気コミックが英訳されている。読もうと思えば、少女マンガは英語で日本の最先端クオリティのものが読めるのである。なぜ、今さらこのレベルの漫画が必要だったのだろう。

 海外でコミック関連の取材をすると、少女マンガにハマる人たちが口を揃えて言うのが、「女性向けのマンガはほかに存在しなかった。こういうものこそ読みたかった」ということだ。にもかかわらず、海外で日本のマンガの売り上げは伸び悩んでいると聞いた。宣伝が足りないのか、ブランド力が足りないのか、まだまだ日本の少女漫画は、コアなファンのみが楽しむ、特別な人たちのものなのだ。そうした世界に触れたことのない人たちが、『Rock and Roll Love』を知り、「アメコミとは違う、この新しいコミック」と評価しているのではないだろうか。マンガに対してまだまだ「子どもの読むもの」という先入観を持っている人も多く、ましてや外国のものとなるとさらに敷居が高いのだろう。 しかし日本の少女マンガをもっと周知させたら、『Rock and Roll Love』人気は幻になりやしないか。

 日本での少女マンガの歴史を少し振り返ってみよう。アメリカ至上主義だった80年代には、日本の少女漫画でも『エイリアン通り』や『パッション・パレード』(ともに白泉社)『ファミリー!』(小学館)など、アメリカが舞台の話がうじゃうじゃあった。しかし「あこがれのアメリカ」の話はいまや過去のもの。現在、少女マンガの学園モノの主流は日本が舞台だ。

 バンドマンがかっこいいという話も、「イカ天」をはじめとした80年代のバンドブームを彷彿とさせる。こうした日本の80年代感覚を保ったまま作品になったのが、『Rock and Roll Love』なのである。つまりこの話、何もかもが古くさいのだ。作者の年齢を鑑みても、恐らく自分が一番少女マンガを読んでいた80年代で感覚が止まっているようである。

 ともかく1つ言えるのは、「英語さえネイティブ並だったら、日本のクオリティでは箸にも引っかからないものが、大いに受け入れられる」ということだ。日本のマンガ家志望の少女たちよ。「英語が嫌い」などと言っていないで、英語をやり給え。漫画を学ぶ時間を多少削ったとしても、その方が断然チャンスがある。

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