楳図かずお、映画『マザー』で描く“絶対的な母親”の存在と“女性”に込める意味
――お母さんの存在の大きさと同じく、楳図監督の漫画は“女性“を恐怖のモチーフにしていますよね。
楳図 男性と女性では恐怖の質が違うのですよ。男性でホラーを描こうとすると行動が鍵になり、暴力を使った残酷を描くことになるのです。その一方、女性だと心理描写がメインになります。心の問題をどうとらえているかが、物語の核になっていくわけです。もちろん、必ずしもそれが全てではありませんけどね。例えばアルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』という映画は、主人公の男の心理をホラーとして描いているのです。必ずしもそうとは限りませんが、女性を中心に置いた場合は、心の問題に持っていった方が自分を素直に出せるんですね。
――なるほど、楳図監督の作品に女性が多いのは、そういう理由なのですね。『マザー』を撮り終えた現在、また映画を撮りたい、第二作も! という気持ちはありますか?
楳図 みなさんのご支援があれば、ぜひやりたいですね。『マザー』がうまくいけば、第二作目も作れるかもしれません。監督二作目と作るとしたら……やはり僕が監督するからホラーになるんでしょうか、わかりませんけど……。でも二作目は注意深く作ることになるでしょうねえ。デビュー作と比較されますし、前よりも期待されるじゃないですか。慎重に注意深く作らないと、期待ハズレになっちゃいますからね(笑)。
(取材・文/斎藤香、撮影/髙橋明宏)
楳図かずお(うめず・かずお)
1936年、和歌山県生まれ。55年『森の兄妹』(トモブック社)で漫画家としてデビュー。66年『ねこ目の少女』『へび少女』で恐怖漫画の第一人者となる。75年『漂流教室』ほか一連の作品で小学館漫画賞。『まことちゃん』『おろち』『洗礼』『わたしは真悟』(いずれも小学館)など作品は多数。音楽活動も活発で75年LP『闇のアルバム』、2011年『闇のアルバム2』をリリース。腱鞘炎悪化のため漫画は休筆しているが、現在タレント、音楽家としても活動中。
『マザー』・公式サイト
2014年9月27日より新宿ピカデリーほか全国公開中
漫画家・楳図かずお(片岡愛之助)のもとに出版社より自伝を出さないかという依頼が来る。取材に訪れたのは新人編集者の若草さくら(舞羽美海)。さくらは楳図を取材するうちに、彼の作品には亡くなった母であるイチエ(真行寺君枝)が深く関わっていると感じる。彼女は楳図をより深く知るために、彼が育った奈良県の曽爾へ行くが、そこで不思議な現象に遭遇し、恐怖におののく……。