選手のDVを隠ぺいしたNFLに、女性ファンが公式広告の写真を加工し猛攻撃
アメリカ4大国技のうちの1つであり、テレビの試合中継は毎回高視聴率を誇る、アメリカンフットボールのプロリーグ「NFL」。毎年2月に開催される優勝決定戦「スーパーボウル」は、国を挙げてのお祭り騒ぎとなり、1億を超える人がテレビ中継を視聴する。試合前の国歌斉唱と、前半と後半の間に行われるハーフタイムショーには大物スターが登場し、超豪華なライブパフォーマンスを披露することでも知られている。
そんなNFLで戦う選手たちの契約金は、メジャーリーグを超えることもあるほど高額。ステイタスも高く、全米からリスペクトされ、セレブスターと結婚する選手も少なくない。
「強くて優しく正義感の塊」「世間のお手本」として見られ、そうあることを期待されているNFL選手たちなのだが、ここ数年、NFLはスキャンダルに見舞われている。サンフランシスコ・フォーティナイナーズの花形選手のゲイ差別発言。マイアミ・ドルフィンズにおける、いじめや日本出身のアシスタントトレーナーに対する人種差別的侮辱暴言騒動。hGH(ヒト成長ホルモン)ドーピング問題に対するNFLの対応の悪さ。アメリカ人は、プロスポーツ選手が薬物乱用や、同性愛・人種差別発言、いじめ、DV問題を起こすことを非常に嫌っており、敏感に反応するため、これらのスキャンダルは大々的に取り上げられ、徹底的に叩かれる傾向にあるのだ。
そんな中で今年2月15日、ボルチモア・レイブンズに所属するレイ・ライス選手がニュージャージー州のカジノで、当時婚約者だった女性を殴って気絶させ、地元警察に逮捕されるという事件が発生。同月19日に米大手ゴシップ芸能サイト「TMZ」が、レイが意識のない婚約者をエレベーターから引きずり出している防犯カメラ映像を公開し、レイブンズとNFLがどのような処分を下すのかに注目が集まった。
しかし、レイブンズもNFLも「慎重に対応したい」と言い、すぐには行動を取らなかった。レイと婚約者は事件のあった翌月結婚。夫婦で「お騒がせした」と謝罪声明を出し、起訴も取り下げられたことから、NFLは7月、レイに対して2試合の出場停止という軽い処分を科すにとどまった。この処分に女性団体などが「NFLはDV問題を軽く見ている」「女性軽視」と猛反発。NFLは8月、「今後、DV加害者に対しては、初犯で6試合の出場停止とする」という新規則を発表。レイへの処分が甘かったことを認めたが、彼に対するこれ以上の処分が科されることはなかった。
だが、今月8日。「TMZ」が、2月15日にレイが当時婚約者だった妻に対して力いっぱい暴行を加えるエレベーターの防犯カメラ映像を公開したことでNFLの態度は一転する。女性を大男が殴りつける姿はこの上なくショッキングなもので、全米に衝撃が走り、態度を変えざる得なかったのだ。
9日、「TMZ」は、NFLはDV事件の発生したホテルに連絡することなく、防犯カメラ映像も入手する手続きをしなかったと報道。大手通信社「AP通信」は、NFLが4月にこの映像を入手していたのに隠ぺいしていたと報じ、NFLは「警察に全ての情報提供を求めていたが、この防犯カメラ映像はもらえなかった」と弁解したが、オバマ大統領が「真の男がやることではない」と非難する騒ぎにまで発展し、レイブンズはレイを解雇すると発表。NFLも無期限の出場停止処分にすると発表した。
その後、NFLは、FBI(連邦捜査局)のロバート・S・ミュラー前長官に事実関係の調査を依頼したと発表。真剣にこの問題に取り組む姿勢を見せている。しかし、世間は、実際にDVされている衝撃的な映像が流出するまで、生ぬるい対応をしていたNFLに大激怒。大手メディアも連日この問題を大きく報じている。
そんな中、NFLの公式スポンサーである大手化粧品ブランド「カバーガール」がNFLのために制作した広告が加工され、SNSに投稿された。瞬く間に拡散され、「NFLをボイコットしよう!」という騒ぎに発展している。