「子育て後のオシャレ」「パパ友との不倫」ママの自己肯定感を煽る「VERY」の巧妙な仕掛け
筆者はいつも「VERY」(光文社)を読むと、「うっすらとした劣等感」を覚えます。それは「VERY」が読者に優越感を抱かせる作りになっているからですが、外野から向けられる劣等感は、「VERY」にとっては燃料みたいなもの。「VERY」の提唱する女性像がいかに優れているかを浮き彫りにさせるために作用しているのではないかと思えます。そして今月号も、やっぱり期待通りの「うっすらとした劣等感」を感じさせてくれる「VERY」に、ああ、安定の「VERY」クオリティ! と喜びすら覚えるのです。
<トピック>
◎ママたちの、着るだけで幸せになれる服
◎週7パンツ派の秋ボトムス更新計画
◎私たちの「加族」体験
■なぜ「ママ」は尊いのか
今月号でまず目に飛び込んだのは、「ママたちの、着るだけで幸せになれる服」という特集でしょう。「子育てでオシャレを我慢している分、こんな楽しみもある!」と、子育てをしているからこそ味わえる、ファッションの醍醐味を紹介しています。例えば「授乳期が終わったら……ワンピースが着られる!」「抱っこ期が終わったら……レースのブラウスが着られる!」「送り迎えが終わったら……全身カラーアイテムが着られる!」「子どもと追いかけっこが終わったら……華奢なヒールが履ける」と、それぞれのコーディネートが紹介されるのです。この企画の表面だけを受け取れば、「まぁ大変な時期が過ぎたら、そういうファッションの楽しみも可能なんじゃないの?」と納得できるかもしれませんが、よくよく考えると、そんな単純ではないことに気がつきます。
今の日本は少子化が問題視されており、「ママ」は女性のカーストの上位に位置します。「一生懸命子育てをして、それが終わって自分の自由な時間がちょっとだけでき、オシャレを楽しむ」のは、選ばれし者だけが味わえる楽しみ。独身者や子どものいない既婚者が、自分をよく魅せるために装うこととは価値が違い、とても尊いことであるという目線が、この企画の根底にはあるわけです。
ママであるという価値を自ら最大限にアピールして楽しむこと。その強烈な自己肯定感に、未婚で子なしの筆者はいつも、「VERY」は完璧だなあ、それに比べて私は……という気持ちに苛まれます。自分の自由はいくらでもあるけれど、それって何もしてないのと同じかも……とさえ思ってしまうのです。