カルチャー
2.5次元コスプレダンスユニット「アルスマグナ」ライブレポート

破綻しない“物語”だからこそ夢を見られる――2.5次元アイドルを求める女子の欲望

2014/09/21 19:00

 そして、アルスマグナが“2.5次元”であるがゆえの人気に迫る証言もある。「3次元のアイドルには、熱愛報道や結婚などでショックを受けることがあるけれど、2.5次元にはそれがないのがいい」(大阪・会社員)。2次元ではないから、実際に会いに行けるし、会話もできる。でも彼らがキャラクターを演じている限り、ファンたちは夢を見ていられるというのだ。

 ちょっと意地悪かなと思いつつ、「キャラクターの中の人には興味がある?」と聞いてみると、皆、中の人がいることを当然知っているし、それが誰かもわかっているという。「中の人」自身のファンになることもあるようだ。「それはそれ、これはこれ」ということか。

 アニメや漫画といった2次元文化が浸透しきった今、私たちは2次元と3次元の世界を自由に行き来することができるようになった。きゃりーぱみゅぱみゅなどの3次元アイドルも、キャラクターを作り上げて見せるところは2次元に近い。

 誰かを好きになるには、「彼はこういう人に違いない」「きっと優しいはず」「こんなことをしてくれる」といった妄想が必要である。2.5次元であるアルスマグナが女子にウケているのは、生身のアイドルとキャラクターとの境界線がかなりあいまいになった中で、自分に都合のいい妄想をかき立ててくれるアイドルやキャラクターを追い求めた結果なのではないだろうか。

 アルスマグナのファンは幸せだ。物語の中のキャラなので、ファンがメンバーを奪い合って勝ち負けを競うことがなく、ゴシップに傷つけられることもないので、自分が飽きるまで追いかけ続けることができる。けれど生身の人たちだから、会いにも行けるし話もできる。そしてアキラが「みんなで武道館に行こう!」と呼びかけることで、ファンたちはアルスマグナの“物語”の一員として夢を支える柱となった。彼女らは、この幸せな楽園からしばらく離れられそうにない。2次元と3次元のおいしいとこ取り。なんて「ずるい」アイドルなんだろう。

【公演情報】
2014年12月22日(月)
「アルスマグナSPECIAL LIVE~クロノス学園 X’mas Prom~」
会場:Zepp DiverCity 東京
料金:前売り4,000円(1D別¥500)
お問い合わせ:ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00-19:00)
アルスマグナ公式サイト

和久井香菜子(わくい・かなこ)
ライター・イラストレーター、少女漫画研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、語学テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。街で見かけたおかしな英文から英語を学ぶ「Henglish」主宰。

最終更新:2014/09/21 19:00
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