[女性誌速攻レビュー] 「VERY」9月号

“ひとり子育て状態”の愚痴を「主人への愛」で美化……「VERY」妻が茶番を演じるワケ

2014/08/18 16:30

■オチは“前向きに”の鉄則

 最近、ネット上で「家事ハラ」の話題をよく見かけます。もともとの「家事ハラ」の意味は、家事労働を行う人に対する嫌がらせを意味し、主に「主婦の行っている家事を過小に評価すること」を指していました。ところが、旭化成ホームズ株式会社(ヘーベルハウス)の「共働き家族研究所」が、この言葉を、「妻が夫の家事に文句を言うこと」として使ったことをきっかけに、話題になったのです。

 そして、くしくも今月号の「VERY」には、この話題とリンクする「“ひとり子育て状態”ママのストレス発散座談会」という企画がありました。なんでも、ひとり子育て状態の家では、夫はウィークデイを仕事で留守にし、家にいるのは日曜日くらい、週一のサンタクロース状態だそう。そんな旦那さんが、家事をやろうとすると、妻側にストレスが溜まってしまうのだとか。

 例えばある参加者は、「突然、洗濯機を回したがる」夫について、「洗剤とか柔軟剤とかいろいろあるからこそやらなくていいのに」と愚痴をこぼします。またの参加者も、「食器をたまに洗ってもらったら汚れが落ちてない。結局やり直し」と語ります。これらは、共働き家族研究所の言う「家事ハラ」問題そのものです。

 しかし、こういった夫婦関係における不穏なテーマを扱いつつ、やはり「VERY」の“基盤”は主婦であること。離婚してしまったら元も子もないため、最後には、無理にでも前向きに明るく締めるのがお約束なのです。


 今回の座談会の最後も、「生まれ変わったらまた旦那さんと結婚したい?」と問われた参加者は、「私がまた私で生まれてしまうなら主人でいいかな」と答え、ほかの参加者も、とりあえず同調するしかないといった感じで、「じゃあ同じく主人で!」と続きます。しかし、どこかそれでは納得がいかないある参加者が、「50歳くらいで未亡人になりたいと思ってたけど」と変化球を投げると、また別の参加者が、「そんなこと言って、寂しくなるよ」と諭します。そして、その言葉を受けて「そういうものかな?そうしたら初めて泣けるかも。ありがとう。愛してた・か・も……って」と返すのですが、こんな茶番がダラダラと続くわけです。

 参加者たちも、そしてこの座談会をまとめたライターの方も、このやりとりが茶番だということはわかっているのでしょう。けれども現在の日本で、しかも「VERY」妻のような裕福な生活ができるならば、こうした「でもなんだかんだ言って、今が幸せだよね」と確かめ合うという茶番を続けることが、賢い選択なのかもしれません。

 しかし……この座談会の次のページに、そんな茶番を根底からひっくり返すような「パパへの罪なきささやかなリベンジ、実例集」という記事がありました。例えば、「ネクタイの端と端を結んで出勤前に驚愕させた」とか、「通勤靴の裏にテープを貼って玄関の床に固定した」とか、「通勤バッグにダンベルをイン、通勤バッグに目覚まし時計をセットしてイン」……などと、これは果たして「ささやか」なんでしょうか。あの座談会の茶番は、なんだったのかと思わずにはいられませんでした。いや、こんなオチャメなリベンジも含めて、茶番なのでしょうか。
(芹沢芳子)

最終更新:2014/08/18 16:34
『VERY(ヴェリィ)2014年 09月号 [雑誌]』
「VERY」妻である私らしいリベンジを追い求めてほしい