「CLASSY.」から「VERY」に受け継がれる、「ママって素敵」の言説
「OCEANS」の2大派閥だという「キレイめ『街男』スタイル」と「サーフ系『海男』スタイル」が、それぞれデートしたくなる女子の服を提案。「いかにも“気合入ってます!”って感じのキメキメの着こなしでデートに来られると、街を一緒に歩くのがちょっと気恥ずかしい」「健康的なスウェットのミニスカート、この丈が嫌いな男はいないはず(笑)」などなど、イイ男たちのありがたきコメントが満載です。やっぱりこういう“男と女の化かし合い”が「CLASSY.」の真骨頂なんですよね。「今日の波、スゴくよかった!」「今度は私も挑戦してみようかな!?」といった、知らんがなの世界。「OCEANSな彼」と「CLASSY.な彼女」こそ日本経済を活性化させてくれるのだと信じてやみません。
■「ママって素敵」と思いたい人たち
今号には関東近郊の海の男たちを集めた「やっぱり“海の男”ってカッコイイ☆」という欲求不満臭漂う素敵なページもあり、こちらもオススメです。ボードを抱えたサーファー5人衆、まさかの全員医者! しかも独身! まさに「CLASSY.」女子たちの極楽浄土です。
続いて紹介するのは、そんなイイ男たちとめでたく結婚となった後に立ちはだかるかもしれない「子どもを持つ」という壁について。「CLASSY.世代が“子どもを持つ”ということ」は、「CLASSY.」世代が気になる出産や育児について識者や先輩モデルたちが語り尽くすページです。産婦人科医の宋美玄や日本IBMの人事部長、料理研究家のコウケンテツらがそれぞれの専門分野からアドバイス。一方「VERY」(光文社)モデルのタキマキこと滝沢眞規子や、「CLASSY.」唯一のママモデルAKEMIらは実体験から子育ての素晴らしさを力説します。
たぶん、より読者の気持ちを引くのは後者のほうでしょう。経済的基盤のしっかりした男性と結婚し、かわいい子どもを産み、なおかつモデルとして活躍している女たちの言葉は、どんな医学的知識よりキャリアデザインより魔力を持って「CLASSY.」女子たちの心を掴みそう。「CLASSY.世代の女性に伝えたいのは、ママは本当に最高のお仕事ということ。大変なことの何百倍もの幸せを感じることができると思います!」(滝沢)、「子供と一緒の生活は感動の連続ということ。子育てって大変だけど、すごく素敵な人生だなって思います」(AKEMI)。大変だけど楽しい、大変だけど素敵……その言葉にウソはないと思いますし、ここでどんより暗いことを話しても仕方ないでしょう。「CALSSY.」を卒業したら「VERY」に出てくるような素敵な奥様になって、オシャレなインテリアの家庭でかわいい子どもを育てて、旦那さんの許しを得て子育てや家事が疎かにならない程度の仕事をして、日曜日はガーデンパーティーして夏休みはハワイで過ごして……すみません、否定したくても根拠が見当たらない! お金持ちバンザイ!
「子どもを持つこと」というのは、絶賛するほど素晴らしいことでも、悲観するほど大変なことでもなく、人間という動物が長い営みの中で繰り返してきた1つの定番スタイルに過ぎないと思うのですが、女性の生き方がある程度選べるようになった今、「自分の選択は間違っていなかった」と思いたいがゆえ、そのことに過剰に意味を持たせてしまうという心理はあると思います。だから「CLASSY.」女子がこれを読み「ママって素敵」「タキマキさんみたいになりたい」というのも1つの選択。でもそれが勝ち負けでも成功/失敗でもないことはいつでも肝に銘じておかないと、いつその反対側に自分が立たされるとも限りません。たとえ「OCEANSな彼」と結婚できなくても、タキマキさんみたいになれなくても、人生はだいたい大丈夫なんです、いや大丈夫だと思いたい、真夏の「CLASSY.」でした。
(西澤千央)